写真論Ⅱ ~未来の姿~(2)
いままつ
「盗撮⁉」
そう叫んだのは、誰であろう石井拓哉先輩である。
「コスプレ研究同好会」通称「コスプレ会」のナースの広瀬ちゃんとドラキュラの安藤ちゃんのお色気ムンムンはこの大学の男子なら知らないものはいないだろう⁉」
「俺は知らんぞ」円先輩。
「僕もです」片山田くん。
私は「なんで片山田くんがここに?」と疑問を呈す。
「正式な入部はまだだが、課題をクリアしたら入部を許可することにした」
課題?
「課題ってなんですか?」
「空手部に入って黒帯を取ってくることだ」
また無茶な課題を突きつけたものだ。
しかし、当の本人の片山田くんはといえば、シレッと空手着を持って「では、先輩! 空手の練習に行ってまいります」と言って退室していった。
「なんか、最近バタバタですね、芸犯も」
そう言いながら、私は冷蔵庫からレモンシャーベットを取り出した。暑い日にはこれが一番効く。
「……うむ。旨い」
もっと素直に言えば言えばいいのに。拓哉先輩なら「うおお! ミホちゃんの作るシャーベットは天下一品!」などと叫ぶどころである。
しかし、その拓哉先輩は腕を組んで押し黙っている。まるで彫刻のごとく動かない。
「拓哉先輩? どうしたんですか?」
すると、拓哉先輩はカッと目を開いた。「ミホちゃん。広瀬ちゃんと安藤ちゃんが盗撮の被害に遭っているんだよね?」
「え? はい。そうですが……」
「俺は犯人を捕まえたい! そして犯人がどうやって盗撮したのか知りたい!」拓哉先輩の後ろに燃える情熱が見えた。
「知ってどうするんだ?」円先輩。
「犯人のコレクションをいただいて……ハッ!」
なあ〜んだ。そんなことか。拓哉先輩が新たな犯人にならないよう気をつけないとな。
「大地字。お前が指揮を取れ」
私は円先輩に振り向いた。「え? 私がですか?」
円先輩が頷く。
「今回は女性の、極めてプライベートな事件だ。女性が担当したほうがいい」
私は「それは、そうですけど……」
持っていたお盆をギュッと抱きかかえた。
「でも、私、円先輩みたいに……」
「俺みたいに、何だ?」円先輩は、私の顔をのぞき込む。「困っている、悲しんでいる、犯罪に巻き込まれている……そんな女性をお前は放っておくのか?」
ハッとした。そうだ。そうだ! 私は芸犯の一員なんだ。その思いが私を突き動かした。
「この事件、私に任せて下さい」
(続)