写真論Ⅱ ~未来の姿~(3)
いままつ
「それで、広瀬先輩と安藤先輩にお訊きしたいのは、いつ、どこで、どうやって、事件に気づいたのですか?」
ここはコスプレ会部室。部室には被害者の広瀬先輩と安藤先輩とともに、私と由里、カンナ、そして真紫のジャージに身を包んだ飛鳥先輩の六人が集まった。特に由里、カンナ、飛鳥先輩は事件を知ると「許せない!!!」と声をそろえ、力を貸してくれることになった。
広瀬先輩と安藤先輩は、コスプレ衣装ではなかった。広瀬先輩は園芸科のつなぎ服、安藤先輩は芸術心理学科らしく地味な私服だった。到底ドラキュラとは思えない。
「えーと……」と広瀬先輩が指をさす。「あそこにカーテンのついてあるブースが二カ所あるでしょ。右が男子、左を女子が使ってるの。で、私がナース服に着替えているときに『カシャッ!』と言う音が聞こえたわけ。見てみたらカメラがこっちを向いてて……」
サーッと、広瀬先輩の顔色がみるみる変わっていった。
「それはいつのことですか?」由里が促す。
「確か三週間ほど前。今年の文化祭にどの衣装を着ようか案を出すために着替えたときだったわ」
「安藤先輩は気づかなかったのですか?」カンナが訊く。
「私が着替える前に広瀬さんが着替えていて気づいたから……。でもいつからカメラが仕掛けられていたかわからないから、もしかしたら、私の着替えも撮られているかも……」そう言う安藤先輩の手はフルフルと震えていた。
それから広瀬先輩から、犯行に使われたと思われるカメラを提出された。カメラは遠隔操作できるもので、どういったものか、カンナに調べてもらうよう頼んだ。
由里に着替えのブースをつぶさに調べるよう指示した。
「あの〜、ミホちゃん?」
「はいはい、なんでしょうか? 飛鳥先輩?」
すると飛鳥先輩は真顔で「私もコスプレ会の女子なんだけど。もしかしたら被害者かも」
「あ〜、はは。そうですね。その可能性もありそうですね」そう言いつつも、本心は『それはないかな……』と思っていた。
由里が歩み寄り、フルフルと、顔を振った。特に怪しいものはなかったようだ。
カンナが例のカメラを手にスマホをいじっている。
「カンナ。何か分かった?」
しかし、カンナも「ごく一般に市販されているものね」ということだった。
早くも根詰まりだ。
「事件の前後で不審な出来事はありませんでしたか?」
「不審なこと?」
「例えばあの着替えのブースを最後に掃除したのは誰か、とか」
「ああ、それなら私よ」そう安藤先輩が名乗り出た。
「確か一ヶ月前だったかしら。掃除は持ち回り制でやっているのよ。そんなにゴミが出る部でもないし、糸くずを拾うためのローラーをかけるぐらいで終わるんだけどね」と言って、安藤先輩は、テヘッと舌を出してみせた。どうやらこれが彼女の『カワイイ』らしい。ドラキュラでされずに済んでよかった。
「その、コスプレ会の部長さんと、ええと、ライオンの男性にもお話を聞かせてもらえますか? プライベートな点は伏せますので」
「津野くんと? ライオン頭?」
ほら、と、安藤先輩が促す。
「蔭山くんね。彼ならいいように使っていいわよ」
「ありがとうございます」
(続)