写真論Ⅱ ~未来の姿~(4)
いままつ
次の日。西日が差す時間、コスプレ会室には芸犯女子メンバーと対峙するように鬼の仮面で部長を務める津田先輩と、ライオンの被り物をした蔭山先輩がいた……。二人とも被り物をして。
「あの、被り物は外してもらえますか?」
すると津田先輩が「そうしたいのは山々だが、被り物をしている部員は、この部室にいる限り、被り物を外してはいけないという規則があるのだ。すまんが、理解してくれ」
するとカンナが「えー、それじゃあ不平等じゃないですか!」
「不平等?」
「だって広瀬先輩も安藤先輩も、被り物なんてせず、堂々と素顔で対応してくれましたよ」
「うっ」という鳩尾にパンチを喰らったような、低い声がした。
「ぶちょー。この子たちの方が正しいと思います。仮面、外しましょう」
そう言うと、ライオンの被り物をしていた男性が、おもむろにライオンの顔を取った。現れたのは、何とも平たんな顔だった。むしろライオン顔の方がイケメンだ。
「蔭山くん……。分かった、僕も取ろう」
そう、津野部長が鬼の面を取った。とたんに全員が目を見張った。
イケメンだ。目鼻立ちくっきりの細面。仮面で隠すなんてもったいない。蔭山先輩と比べたら、蔭山先輩がかわいそうである。
「被り物取ったよ。それで、訊きたいことって何かな?」
本題に入る。
「昨日、広瀬先輩と安藤先輩にお話を聞きました。津野部長と蔭山先輩は、カメラの存在について何か知っていることはありませんか?」
二人の先輩は呼吸を合わせるように首を振った。それから部長が語る。
「確かに三週間前に広瀬さんからこのカメラが仕掛けられていたと申し出があったよ。でもカメラ自体からは写真類がでてこなかったから、僕たちにはお手上げだったんだ」
「カンナ。カメラに画像転送装置は付いてなかった?」
カンナはカメラを見つめ、「ついてる、というかプログラミングが組み込まれているようだったよ。カメラでシャッターを切ると、カメラじゃなく、送信先のパソコンに保存されるようにね」
なるほど。
「問題は誰が犯人かね」
するとそのとき「あの〜……」と飛鳥先輩が話しかけてきた。「私はいつまで蚊帳の外なの?」
「あ〜、はいはい。飛鳥先輩にはしていませんよ。飛鳥先輩には重大な役目があります」
「重大な役目?」
「それは……」飛鳥先輩の耳元で囁く。「それは重大ね!わかったわ」
「よろしくです」
※※※
芸犯部室に戻った。
「さて、犯人は誰だろう? さっぱりだわ」私はテーブルに突っ伏した。
「そうねぇ。あの四人の中にはいなさそうね」
「もしかしたら、外部犯?」
いや、違う。犯人はあの四人の中にいる。そのためには、犯行の理由が分かれば……。
「お、解決したか?」円先輩が部室にやってきた。
私は率直に「まだです。全然まだです」と答えた。
「そうか」円先輩がテーブルを挟んだ真向かいに腰を下ろした。「じゃあ、ヒントをやろう」
ヒント?
「犯人が今回の犯行をしたのには理由がある」
そんなこと分かっている、と反論しようとした。が、その前に円先輩の言葉が響いた。
「ということは、その『理由』は犯人にとってデメリットよりもメリットが大きい。つまり利益があるんだ」
メリット……利益……?
「そして、なおかつデメリットが少ないことが多い」
デメリット少なし……。
その瞬間、雷が落ちた。
「そうだ! なるほど! そういうことか!!」私は叫び上がった。
ちょうど入ってきた拓哉先輩が「うお!」と飛び退いた。
「ありがとうございます。円先輩、拓哉先輩」そう言うと私はガールズを引き連れて部室を後にした。
「ミホちゃん、一体何だったんだろう」そう、後ろで拓哉先輩がつぶやくのが聞こえた。
(続)