写真論Ⅱ ~未来の姿~(5)
いままつ
コスプレ会部室。ナースで被害者の広瀬先輩、ドラキュラの安藤先輩、ライオンの蔭山先輩、鬼の津野部長が集まった。
「犯人が分かったって?」
津野部長が言う。
「はい。分かりました。実に簡単な事件でしたが、ある思い込みが私たちの思考をロックし、考えを阻んでいたのです」
「思考をロック?」安藤先輩が復唱する。
「ええ。私たちの思考をロックしたのはこれです。『被害者が犯人なわけがない』です」
シーンと音が止み、皆がある人物を見た。それはとてもスローな時間だった。
「そうですよね? 犯人の広瀬先輩」
※※※
「な、何を言っているの、大地字さん? 私が犯人? どういうこと?」
「広瀬先輩の話の中で、ちょっと不審な発言がありました。由里、カンナ、一昨日を思い出して。広瀬先輩がカメラを見つけたという状況説明を」
由里「確かカメラを見つけたときは……」
カンナ「音がしたと。『カシャッ』という音が」
津野部長が迫る。「その発言の何がおかしいんだい?」
私は言う。「このカメラを見てください! これ、ビデオカメラです。シャッターなんて切れないんですよ」
「えええ!!」みんな驚きの声をあげた。
「そ、そんなこと言ったかしら」
そう、はぐらかすだろうということは踏んでいた。それは私ではない、円先輩の入れ知恵である。円先輩は私に探偵の三種の神器の一つ『ボイスレコーダー』を託したのだ。
私はボイスレコーダーを再生する。
「……右が男子、左を女子が使ってるの。で、私がナース服に着替えているときに『カシャッ!』と言う音が聞こえたわけ。見てみたらカメラがこっちを向いてて……」
「……はっきり言ってましたね」
安藤先輩が「広瀬さん、どうして?」
「それはおそらく、アダルトビデオでしょう」
「あああ、アダルトビデオ!?」蔭山先輩は戸惑うように叫んだ。
「おそらく、広瀬先輩はアダルトビデオに出演することで小遣い稼ぎなどをしていたのでしょう。でも、おそらく教育実習でも受けるにあたりそれが足かせになった。だから、『盗撮された』『本意ではない』ということを私たち芸犯に証明させようとしたのでしょう。違いますか?」
「何を証拠に……」
「動かぬ証拠ならありますよ」
広瀬先輩が目を見開いた。
「広瀬先輩が投稿していたアダルトビデオサイト『オトナのオヘヤ』のサイト運営者に警察を通じて連絡を取るよう依頼します」
「け、警察……」
「これでも白をきるつもりですか」
広瀬先輩はその場に崩れ落ちた。
(続)