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第45話グラフィックデザイン演習Ⅰ~策略~(2)

グラフィックデザイン演習Ⅰ~策略~(2)

いままつ


由里は私とは違い、パソコンを巧みに駆使していた。私にはチンプンカンプンな用語を話すと、「そうか」と私ではなく円先輩が受け答えしていた。どうやら円先輩に任せたほうがよさそうだ。

「で、主訴は何?」

「ハッキングされて、作品のデータを盗まれたのよ〜。これからの講義の分を先に作っていたのに!!」

私の脳裏には、『絵画Ⅰ』で飛鳥先輩に作品案を盗まれたときのことを思い出した。

私は、人の作品を盗むことはサイテーだと思っている。どれだけの労力を、時間を、精神を、作品作りに捧げているのかを分かっていないのだろうか?

「しかし、まだ盗まれた作品データは悪用されたり、ネットに公開されたりはしていないようだな」

円先輩はスマホをいじりながら発言する。

だが、私は円先輩に言いたい。『だから何なのか』と。

悪用されたりネットに公開されたりしていなければ、それで良いのだろうか。

ーー許せない。

「由里、ハッキングされたパソコンとデータはある?」

由里は「それならこのパソコンよ」と、テーブルに開いて立ち上げていたパソコンを指さした。

「だけどデータは全部抜き取られちゃったの」肩を落とす由里。

「大丈夫。芸犯として、この事件を解決しましょう!」


※※※


「……と、いうわけで、この事件を捜査したいと思います」

「分かったわ」カンナ。

「やりましょう」飛鳥先輩。

「ゆゆゆ、由里ちゅわんの大切なデータを盗むなんて……許せん!」拓哉先輩。

そして、私、円先輩、当事者の由里の、芸犯メンバー総出で取り掛かることになった。

「そこで、詳しく話を聞きたいの」

由里は頷く。

「まず、ハッキングに気づいたのはいつ?」

「気づいたのは一時限目の教職論の講義が終わってから。図書館で別の講義のレポート書こうと図書館でパソコンを立ち上げたら気づいて……目の前が真っ白になったの」

「グラフィックデザイン演習Ⅰのデータだけど、いくつぐらい作成・保存していての?」

「だいたい10コマ分は作っていたかな。シラバス見て、先に作っていたの」

カンナが「パソコンにパスワードは設定していなかったの?」

すると由里はかしこまって「……一応はつけてたんだけど、忘れると嫌だから単純なものにしてたの」と答える。単純?

「……ちなみに?」

「……1234」

シーンと数秒間の『間』があった。

「ま……まあ、それは置いといて」私は仕切り直す。「どうやって調べたらいいのかしら。何かいい案はない?」

私の問いかけに女子陣は黙りこくってしまったが、拓哉先輩が手を挙げた。

「その点に関しては、もう解決したんじゃないかい?」

「え?」

私は耳を疑った。

(続)


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