グラフィックデザイン演習Ⅰ~策略~(3)
いままつ
「た、拓哉先輩! それはどういうことですか?」
拓哉先輩は、ツンツンと、隣に座っている円先輩を指さした。
「プログラミング検定一級のヤツがいるよ。もうパソコンを見たのなら、何かしらの痕跡を見つけているかもよ」
円先輩がテーブルの上にのさらに盛られたチーズおかきを一つ手にとって、頬張った。
「本当ですか? 円先輩」
「うむ」
いや、うむ、じゃなくて何か言葉はないのかい!
そう思っていると、円先輩は再びチーズおかきを食べた。
「で、何が分かったんですか?」
スッと、私たちの前に、人差し指が立てられた。
「分かったことは、ただ一つ……」
ゴクリと息を呑む。
「分かったことは、ハッキングされていない、ということだ」
「……え?」
一同の顔に困惑の表情が浮かんだ。ハッキングされていない?
「で、でも、由里のパソコンはハッキングされて。データが盗み取られて……」
見ると、由里の手が小刻みに震えていた。
「由里……?」
由里は床に伏せた。
「ごめんなさい‼」
※※※
「由里……なんで……?」
「ごめん……ごめん……」由里はそう嘆くばかりだった。
「グラフィックデザイン演習Ⅰ、だな」
「グラフィックデザイン演習?」カンナが復唱する。
「おそらく課題ができていないんだろう。だからパソコンがハッキングされてデータが盗まれ、消去されたことで提出できないと、おそらく種田教授を通して主張しようとしたんだろう」
由里は嗚咽を漏らしながらウンウンと頷く。
「他の授業の課題やアルバイトが忙しくて……課題ができなくて」
「言語道断!」
円先輩から厳しい言葉が放たれる。
「課題ができない? それはお前だけの問題じゃないだろ。グラフィックデザイン演習を受講しているみな平等なはずだ。それをコソコソと悪知恵を働かせて」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
私は「円先輩!」と言い、まだ愚痴りたい先輩から主導権を譲ってもらった。
「由里。円先輩の言う通りよ。課題はあなただけに課されるわけじゃない。みんな平等に出される。だから……」
私はポンと由里の肩を叩いた。
「一緒に考えましょう。困ったときには協力するんだから」
「ミホ……」
「そうよ、由里。困ったときはお互い様なんだからね」カンナがほほ笑みながら語りかける。
「そうよ、由里ちゃん。一緒に頑張りましょ」飛鳥先輩が言った。
(続)