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第46話グラフィックデザイン演習Ⅰ~策略~(3)

グラフィックデザイン演習Ⅰ~策略~(3)

いままつ



「た、拓哉先輩! それはどういうことですか?」

拓哉先輩は、ツンツンと、隣に座っている円先輩を指さした。

「プログラミング検定一級のヤツがいるよ。もうパソコンを見たのなら、何かしらの痕跡を見つけているかもよ」

円先輩がテーブルの上にのさらに盛られたチーズおかきを一つ手にとって、頬張った。

「本当ですか? 円先輩」

「うむ」

いや、うむ、じゃなくて何か言葉はないのかい!

そう思っていると、円先輩は再びチーズおかきを食べた。

「で、何が分かったんですか?」

スッと、私たちの前に、人差し指が立てられた。

「分かったことは、ただ一つ……」

ゴクリと息を呑む。

「分かったことは、ハッキングされていない、ということだ」

「……え?」

一同の顔に困惑の表情が浮かんだ。ハッキングされていない?

「で、でも、由里のパソコンはハッキングされて。データが盗み取られて……」

見ると、由里の手が小刻みに震えていた。

「由里……?」

由里は床に伏せた。

「ごめんなさい‼」


※※※


「由里……なんで……?」

「ごめん……ごめん……」由里はそう嘆くばかりだった。

「グラフィックデザイン演習Ⅰ、だな」

「グラフィックデザイン演習?」カンナが復唱する。

「おそらく課題ができていないんだろう。だからパソコンがハッキングされてデータが盗まれ、消去されたことで提出できないと、おそらく種田教授を通して主張しようとしたんだろう」

由里は嗚咽を漏らしながらウンウンと頷く。

「他の授業の課題やアルバイトが忙しくて……課題ができなくて」

「言語道断!」

円先輩から厳しい言葉が放たれる。

「課題ができない? それはお前だけの問題じゃないだろ。グラフィックデザイン演習を受講しているみな平等なはずだ。それをコソコソと悪知恵を働かせて」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

私は「円先輩!」と言い、まだ愚痴りたい先輩から主導権を譲ってもらった。

「由里。円先輩の言う通りよ。課題はあなただけに課されるわけじゃない。みんな平等に出される。だから……」

私はポンと由里の肩を叩いた。

「一緒に考えましょう。困ったときには協力するんだから」

「ミホ……」

「そうよ、由里。困ったときはお互い様なんだからね」カンナがほほ笑みながら語りかける。

「そうよ、由里ちゃん。一緒に頑張りましょ」飛鳥先輩が言った。

(続)


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