戯曲・演劇~三人のヒロイン~ (2)
いままつ
「どうぞ」とカンナが粗茶を出す。
「あ、ありがとうございます……」
どこか挙動不審な彼は、須藤蒼雷と名乗ったが、名前負けしそうなほど弱々しい印象を受けた。
須藤はどこか落ち着かなかった。芸犯メンバーに見つめられているからだろうか?
須藤は自らを文学科2年生と言った。
「それで、何があったんでですか?」
「それが、聞いてください。僕、演劇部に所属していて、特にシナリオを書いているんです。この間、苦心の末、一曲書き終えて部長からOKをもらったんです。すぐに台本にして配られましたが、問題が生じました」
「問題?」飛鳥先輩が首をひねった。
「ええ。演劇部には三人の『ヒロイン』がいるんです。三人とも特段に仲が良いというわけではなく、かといって悪いわけではありません。いつもは部長がシナリオを書いて、その作品のヒロインを決めます。ですが今回は僕がシナリオを書いたので、ヒロインの決定権は僕にあると、部長は言うのです」
円先輩は、頷いた。演劇部部長の意思に賛同したのだろうか。
「でも、僕決められなくて……。そうしたら、ヒロイン役の人たちに脅迫状が送られてきたんです」
脅迫状⁉
スッと円先輩が手を挙げた。
「一つ質問がある」
「はい、なんでしょうか?」
「その脅迫状は、三人のヒロインに対して、同時に送りつけられたのか?」
たしかにそれは確かめなければならない。犯人が同一人物ならば、犯行も同一時期なのかもしれない。
しかし、須藤は首を振る。
「いいえ。数日違いで送られてます。一週間前に大津のり香さんに。五日前に沢田うたさんに。一昨日に野呂紗佳さんに、それぞれ届いています。もう、演劇部はめちゃくちゃですよ」
須藤は頭を抱えている。
「円先輩、三人のヒロインに会ってみたいのですが」
「うむ。それがいいだろう」
(続)