戯曲・演劇~三人のヒロイン~ (3)
いままつ
次の日。演劇部部室
大津のり香は音楽学部声楽科の四年生だった。しかし、大学四年生というよりも、お局様という印象を受けた。メイクが濃いからか?
須藤が「大津先輩。こちら芸犯の方々です」と我々を紹介した。
大津は最初こそ「芸犯?」といぶかしがっていたが、事件の調査だと伝えると、協力の態度を見せた。
「私に届いた脅迫状は、これよ」そう言いながら部室中央に据えられた机に置かれたのは、折りたたまれた一枚のA4用紙だった。
「開いてみても?」
大津はクイッとあごを動かした。どうやらOKのようだ。少しムカついたが……。
脅迫状を開く。それは『The 脅迫状』といったもので、新聞紙の文字を切り取って貼り付ける古典的なものだった。
「この脅迫状はいつ届いたのですか?」由里が尋ねる。
「届くも何も、私のロッカーにマグネットで貼り付けられていたのよ。畳まれて」大津は自分のロッカーを指さして言う。
「まあ、普段この部室には鍵なんてかかっていないから、誰が入ってきてもわからないんだけどね。冗談にもほどがあるわ」
冗談……?
私は脅迫状を読んだ。
ひロイんをおりろ
さもナくバ
後悔スルことになるぞ
確かに具体的なことは何一つ書かれていない。だが、看過もできない。
(続)