戯曲・演劇~三人のヒロイン~ (4)
いままつ
1時間後、沢田うたが現れた。
沢田うたは芸術心理学科の3年生だという。必然的に円先輩と拓哉先輩の後輩となり、円先輩も拓哉先輩のことも知っていた。
「環円先輩も石井拓哉先輩も超有名よ! 成績オールSという偉業を達成したお二人なんですから! うわぁ……会えるなんて嬉しい」
成績の情報が漏れてる点は、後で学生部に注意しないといけないが、二人の先輩は満更でもないようなので、後回しでもいいだろう。
「沢田先輩。あなたにも脅迫状が届いたとお聞きしましたが」
沢田は真剣な顔をした。
「そうなのよ。ロッカーに張り付けられてあったんだけど、一体誰がやったのか、まだ分からないのよ」
「気づいたのは六日前だとか……」
沢田は軽く頷く。
「そうよ。六日前は日曜だけど、演技のレッスンのために登校してたの。まあ、ほとんどの部員が土日も来ているんだけどね」
「ふむ。それで脅迫状はどこにあったのですか?」飛鳥先輩が訊く。彼女は、今日はアルミホイルのような、宇宙人のようなテカテカの光を反射する服を着ていた。一体どこでかったのか不思議でならない。
「五日前、その日は授業がほとんど無くて、この部室に一番に来たの。そしたら、私のロッカーにこんなものがマグネットで貼られていたんだから」
そう言い、沢田は自分のロッカーから一枚の紙を取り出して我々に見せた。
そこにはワープロ字で短文書が書かれていた。
ヒロインをやめろ
天罰が下る
大津よりもわかりやすく、『天罰』というざっくばらんな内容であった。
沢田からは、あまり情報は得られないようだった。
(続)