戯曲・演劇~三人のヒロイン~ (6)
いままつ
部室に戻ると、片山田くんがボロボロの道着を着てソファでいびきをかいて寝ていた。
まったくもー……
そう思ったが、ボロボロの道着からちらりと見えた片山田くんの意外にも鍛えられた腹筋に、ドキッと顔を赤らめてしまった。
起こそうか……
迷っているうちに円先輩が「起きろ!」と片山田くんの頭をひっぱたいた。片山田くんは「え? なになに⁉」と頭を抱えて起き上がった。
「あ! 片山田くん、来てたのね」飛鳥先輩。
「はい! でも誰もいなくて、待っているうちにウトウト……。さっき雷落ちませんでした?」
「大丈夫。落ちてませんよ」
「大地字、小腹がすいたんだが、何かないか?」
円先輩の『小腹』は完全に空腹のときの隠語だ。それなりに食べ応えのあるものでなければ満足しない。つまりゼリー類など言語道断。私にも雷が落ちてしまうだろう。
「はいはい。少々お待ちください」そう言いながら、私は冷蔵庫に駆け寄り、トレーを取り出す。
「なになに?」カンナがのぞき込む。
「ティラミスよ。お皿とフォークの準備お願い」
「ラジャー」こういうとき女子はテキパキと動く。男子はデクノボーである。
円先輩、拓哉先輩、飛鳥先輩、由里、カンナ、片山田くん、そして私の分を取り分ける。
「いただきま~す」
「美味〜い」片山田くん
「この層になっているのがいいわよね〜」飛鳥先輩
「ビターチョコだけじゃないわね? 隠し味は何?」由里
「キャラメルソースを少々」私
と、ジッとティラミス・ミホ・スペシャルを見つめる円先輩が目に入った。
ティラミス……。
「大地字、でかした! この事件解決するぞ」そう言い放った。
(続)