博物館教育論~二つのピンチ~(1)
いままつ
「それでは、次回は中間試験を実施します。単位認定の評価の一つとしますので、しっかり復習して臨んで下さい」そう、担当の馬場先生は言い、壇上を降りた。
学生たちも各々席を立つ。
私とカンナも席を立つ。
「大地字さん……」
そう、呼び止める声がしたので振り返ると、ボロボロ道着の片山田くんが倒れていた。
何で今もボロボロ道着を着ているのだろう?
不意にそう思った。
「あ、おはよう、片山田くん。そんなところで寝てると風邪ひくよ」
もちろん冗談だ。
が、立ち上がった片山田くんは、おもむろに私の両肩を掴み。
「……付き合ってくれ……」
と、言い放った。もちろん私はその場で固まるとともに、一緒にいたカンナも、一体何が起きているのか状況の整理がついていないようで棒立ちだった。
「付き合ってって、どういうこと……?」
すると、フラッと彼が倒れ込んできた。そんな彼に倒され、私は下敷きになった。
片山田くんは百七五センチほどの身長は普通だが、最近、円先輩の指示で始めた空手のためか、初めて会ったときとは明らかに体格が異なっていた。
見た目よりも、重い。
「ちょっと、あんたミホに何してんの!?」
カンナが慌てて間に入る。そのカンナが手を止める。
「ん? 寝てる……」
寝てる?
確かに片山田くんは「クークー……」と寝息を立てていた。しかし、彼の左手は、幸か不幸か、私の右胸を鷲掴んでいた。
んんんんんんん!?
サワっと彼の手が私の胸をもんだ。
「イアアアア!!」
私は叫んでいた。
(続)