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第57話博物館教育論~二つのピンチ~(2)

博物館教育論~二つのピンチ~(2)

いままつ


「で? お前は自分のしたことを覚えていないと?」

円先輩の前で、片山田くんは正座をし、体を硬直させて、青ざめていた。

私は泣き止む事が出来ず、幼児のように泣くだけであった。

あれから何があったかというと、カンナが円先輩に連絡すると、コンマ数秒で円先輩は現れ、私に覆いかぶさっている片山田くんの首根っこを掴んで持ち上げ、芸犯部室に投げ入れた。私はカンナと、途中で会った由里と飛鳥先輩に支えられて移動した。

「は、はい。体の疲れと課題作成と……」

「問答無用! 大地字! 大丈夫か?」

私はグスグスと涙を拭き取ったが、涙は止まらなかった。

「片山田、サイテー」

「片山田、謝りなさいよ」

「片山田くん、女の敵」

女の言葉は男にとってはナイフのように胸に突き刺さる凶器である。

「ミホちゃん、これ飲んで落ち着いて」そう、飛鳥先輩が緑茶を淹れてくれた。みんな授業があるというのに、私のために休んでくれた。優しい仲間を持ったものだと! 心から感謝した。

「大地字さん、本当にごめん!」

そう言いながら、片山田くんは床に額をくっつけて謝ってきた。文字通り平謝りだ。

「俺が『付き合って』と言ったのは、博物館教育論の中間試験の対策勉強に付き合ってくれないかということだったんだ」

中間試験?

「俺、最近、空手に打ち込んじゃって、あまり授業に集中できていないんだ」

「なあんだ。そんなことか。それなら私に言いなさいよね」

カンナがそう言うと、片山田くんは頭を抱えた。

「いや、カンナさんに言うと、なんか自分の弱さをひけらかすようで……」

「あんた、今自分の置かれている立場分かっているの?」

そう言われ、「すみません……」と再び謝った。

(続)

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