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第16話 グループ分けと脅迫


早川智洋の行動に、ファンたちはさらに熱狂した歓声をあげた。


「きゃー!早川家の二番目の凛様だ!妹思いで最高!兄妹カップル推せる!」

「愛花ちゃん、なんて幸運なの?お兄様に可愛がられて、国民的俳優にも守ってもらえるなんて!」

「これぞ本物のお嬢様待遇だよね!」


ファンたちは興奮しながら話し合っていた。


早川智洋はそんな称賛の声を聞きながら、わざと早川奈緒の方へ鋭い視線を向けた。その目には警告と嫌悪が込められ、彼女の顔に少しでも怒りや落ち込みの色が見えないか探ろうとした。


だが、早川奈緒はただスマートフォンを見つめ、周囲の騒がしさなどまるで関係ないように冷静な表情を浮かべているだけだった。


その姿に早川智洋は苛立ち、拳を握りしめる。場が違えば、今にも彼女に詰め寄りそうな勢いだった。


「ごめん、遅くなっちゃった!」と、元気な女性の声が響いた。


サングラスにワークパンツ、Tシャツ姿の女性が足早にやってきて、サングラスを外すと明るい顔立ちが現れた。


「ようこそ、私たちの人气女優・小野寺美咲さん!」司会者が興奮気味に抱きしめにいく。


その後ろを歩く男性が笑いながら茶化した。「どうやら男性は女性より人気がないみたいだね、抱擁はなし?」


司会者は慌てて笑いながら返す。「内木さんは国民的俳優ですよ!私なんかがおこがましくて……!」


ファンたちはそのやり取りにどっと笑い声を上げた。


小野寺美咲はキャリーバッグを押しながら、皆をざっと見渡し、最後に早川奈緒のところで足を止めて、右隣に座った。


内木克哉も自然と早川奈緒の左側に腰を下ろす。


ふたりに挟まれ、今まで隅にいた早川奈緒は一気にカメラの中心になった。


「よろしくね。」と小野寺美咲が小声で早川奈緒に話しかける。「この後、無人島でサバイバル。頼りにしてるから。」


「僕も、無人島は初めてだよ。」内木克哉も低い声で続けた。


早川奈緒は少し驚いたように微笑み、「こちらこそ、よろしくお願いします」と返した。


その光景が早川愛花には耐えがたいものだった。


彼女は入念にドレスアップし、Vネックのキャミワンピでわざとボディラインを強調してきたのに、主役の座は小野寺美咲に奪われてしまっている!


しかも、このふたりは元々犬猿の仲。あの大ヒットした時代劇のヒロイン役は、早川愛花が必死に掴もうとしたのに、小野寺美咲に横取りされた。ドラマ放送後、小野寺美咲は一気にトップ女優へ、愛花はいまだに二流のままだ。


「お兄様!あの子たち、私を仲間外れにしてるの!私だって妹なのに!」早川愛花は歯を食いしばり、瞳の奥に憎悪をたぎらせる。せっかく高額でオーダーしたドレスも、まるで話題にならなかった!


「落ち着け。」早川智洋は愛花の手を軽く叩いた。「まだ島に着いてないだろ?向こうでは……命がけになるかもな。」


冷泉慎也は黙ったまま、じっと早川奈緒を見つめていた。いつの間に小野寺美咲や内木克哉と親しくなったのか、自分は全く知らなかった。


「ごめんごめん!渋滞で遅くなっちゃった!」と、汗だくの女の子がキャリーケースを引きながら走り寄ってきた。後ろには男の子が続いている。


彼らは新人アイドルの小関夏葵と竹下周平。今回の目的は顔を売り、チャンスを掴むことだ。


「どうやら、ゲストが全員揃いましたね。」司会者がマイクを手に宣言した。


小関夏葵と竹下周平は、残った二つの席を見て少し躊躇しつつも座りに行った。竹下周平は冷泉慎也の隣に、小関夏葵は小野寺美咲の隣に腰を下ろす。


「それでは、ルールを発表します!」司会者の声がひときわ大きく響いた。「今回の《無人島サバイバル》では、スマホは没収しませんが、島に上陸したら電波は遮断されます。スマホは島内メンバーとの連絡のみ利用可能です。」


「全編ライブ配信、撮影クルーも同行します。では荷物チェックを。食品類の持ち込みは禁止、必要な薬だけ持ち込み可能です。」


「また、防犯・防災用具はこちらから選んでください。ロープ、短刀、包丁、斧、スタンガン、水鉄砲、防犯スプレー、スコップ。ひとりひとつだけ選べます!」


スタッフが道具を前に並べた。


「私、これがいい!」と、早川愛花が一番に飛び出し、スタンガンを力強く握りしめた。


早川智洋は目を細めて立ち上がり、「じゃあ、俺は斧にする。」


冷泉慎也もすぐに続く。「僕は包丁で。」


竹下周平も前に出て、「スコップをもらいます。」


司会者は笑いながら、「どうやら、四人は自然と同じチームになりましたね。残りの道具はもう一方のチームへ。」


こうして、早川奈緒は短刀、小野寺美咲はロープ、内木克哉は水鉄砲、小関夏葵は防犯スプレーを手にした。


道具が全員に行き渡ると、司会者が大発表を投げかけた。


「島で過ごす二週間、皆さんのメインミッションは“食料の確保”です!」


「最終的に、最も多くの食料を確保したチーム全員に、ロイヤルエンターテイメントのS級リソース契約が与えられます!」


その場が一瞬で静まり返った。


ロイヤルエンターテイメント――業界トップの巨大事務所。最強のコネとリソースを誇り、トップ俳優が多数所属する。S級契約を取れば、一流の世界に片足を踏み入れたも同然だ。


早川愛花の目には貪欲な光が宿り、スタンガンを握る手にもさらに力が入った。絶対に勝ち取るつもりだ。


「それでは、乗船して出発です!」司会者が宣言すると、ファンたちは割れんばかりの声援を送った。


一同は順番に船に乗り込む。早川奈緒は立ち上がってトイレへ向かい、用を済ませて出ようとしたところで、出口に立ち塞がれる。


早川智洋が険しい表情で、冷たい目で彼女を見据えた。


「兄様が言っただろう。今回の番組、お前は愛花の引き立て役に徹するんだ。」


「彼女が一位を取れるように全力で協力しろ。愛花がロイヤルエンターテイメントのリソースを手に入れられたら、早川家も仕方なくお前を“正式な家族”として認めてやる。そうじゃなければ――」声には露骨な脅しが込められていた。「契約が切れ次第、家から出て行ってもらうからな。」

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