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第22話 思いがけない発見


内木克哉の疑問の眼差しを受けながら、早川奈緒はさっと立ち上がり、二本の大きな木の間へと歩み寄り、手招きした。「ちょっと手伝って。」


「はい!」小野寺美咲はすぐに元気を取り戻し、嬉しそうに袖をまくって白い腕を見せた。


小関夏葵も荷物を置いて、急いで後に続いた。


奈緒は短刀で周囲の草を手際よく刈り取ると、そこには巨大な石が二つ並んでいた。「この石、どかそう。」


「やってみる。」と内木克哉が力を込めて石を動かそうとしたが、驚くほど重くてびくともしない。


「ロープ、貸して。」と奈緒。


美咲がすぐに自分のロープを差し出す。奈緒は受け取ると、素早く大石にロープをかけ、太い幹に回して、両手でグッと引っ張った。


「ゴロゴロッ!」重たい音とともに、石が巧みにてこの原理で横に転がった。もう一つの石も支えを失って、同様に転がり落ちる。


すると、二つの大石が動いたその下から、隠された洞窟の入り口が姿を現した!


「本当にあった!奈緒、どうやって気づいたの?」美咲は驚きと尊敬の眼差しで奈緒に近づいた。


誰もが驚きを隠せず、こんな場所を見つける奈緒に感心しきりだった。


「たまたま目に入っただけ。」奈緒は説明した。「こんな古い大木の下は、誰も雨宿りしないの。雷が落ちやすいから。」


夏葵も興味津々で、「雷が落ちやすいなら、ここにいるの危なくない?夜に雷雨だったら……」と心配を口にした。


内木克哉も同じく不安そうにうなずく。


奈緒は微笑みながら木を指し、「だからこそ、猛獣も近づかない。実はここが一番安全なのよ。それに、雷に打たれた木は魔除けになるって言い伝えもあるの。」


そう言いながら、短刀で洞窟の入り口周辺の草をさらに取り除いた。


「雷雨の時さえ木の下にいなければ、洞窟の中は安全。この石は人為的に塞がれていたから、きっと昔誰かが住んでいた場所。出ていくときにわざわざ封じたんだろうね。」


そう説明しつつ、奈緒は先頭に立って懐中電灯をつけ、中へと入った。


洞窟の中は乾いていて綺麗で、隅には乾燥した草が積まれていた。


「わぁ、本当に人が住んでたんだ!見て、茶碗もある!」美咲は嬉しそうに声をあげた。


内木克哉と夏葵も中に入り、空間は広々としてテントを張ったり煮炊きするにも十分な広さだった。


「ここにしよう、今夜はここで。」内木克哉は即断し、奈緒への感謝と尊敬の眼差しを向けた。彼は最初、奈緒のことをよく知らずに美咲の選択についてきただけだったが、思いがけず頼りになる存在に巡り合えたのだ。


「奈緒って、本当にいろいろ知ってるね?」美咲の好奇心は抑えきれない様子だった。気づけば自然と「奈緒」と親しげに呼びかけていたが、奈緒も特に気にする様子はなく、二人の距離は一気に縮まった。


「昔、神主養父と山で暮らしてたから。ちょっとはできないと、野生動物の餌になっちゃうでしょ。」奈緒は笑いながら答え、どこか誇らしげな表情を浮かべた。奈緒の師匠はとても厳しい人だったが、その元で育てられたことこそが彼女の誇りだった。


「山育ちなんだ?今度機会があったら、私たちも連れて行ってよ!」美咲は、奈緒が知名度の低い女優ということも気にすることなく、フレンドリーに話しかけた。


奈緒は眉を上げ、短刀をマーチンブーツの脇にしまいながら外へ。「君は人气女優、彼は国民的俳優、そして夏葵ちゃんはアイドル。私と一緒に山へ?笑われるよ?」


「何言ってるの?誰だって自分の力で食べてるんだし。それに、私は奈緒のことすごいと思う!戻ったら、私から色々紹介してあげる!」美咲は自信満々に胸を張った。


そう言うやいなや、美咲は奈緒にぐっと顔を近づけ、透き通るような肌と整った顔立ち、特に澄んだ瞳をじっと見つめた。


「ねぇ奈緒、彼氏いるの?」小声でワクワクしながら聞く。


奈緒は荷物を持ちつつ、笑顔で答えた。「結婚してるよ。」


「え?うそ!全然そんな風に見えない!こんな美人なんだし、私の兄貴紹介しようか?超イケメンだよ!」美咲はますますノリノリで、荷物を持って奈緒のあとを軽快に追いかけた。カメラマンもその様子を映し続ける。


【美咲、恋のキューピッドになりそう!】

【奈緒、この若々しさで既婚者?絶対見えない!】

【うちのおばあちゃんも、奈緒はまだ未婚だって言いそう】

【美咲×奈緒のカップル推し!】

【隠れた洞窟を見つけるなんて、さすが!】

【今夜、風が強くなるのかな?今は穏やかそうだけど】


コメント欄も盛り上がり、視聴者は彼女たちが洞窟にテントや生活用品を設置する様子を見守っていた。


すでに夕方の五時が近づき、奈緒は時計を確認した。


「そろそろ周辺の様子を見て、食べ物も探さないと。暗くなったら危ないから。」


テントにぐったりしていた面々も、すぐに気を取り直して立ち上がる。


「そうだね、食料探しが最優先だ。」内木克哉も同意した。


みんなで奈緒について洞窟を出て、少し歩くと、早川愛花たちのグループと鉢合わせた。彼らは薬の匂いがし、傷の手当てをした様子で、愛花の顔には可愛い絆創膏がいくつも貼られていた。


「まだ寝る場所見つかってないの?」愛花は甘い笑みを浮かべつつ、どこか得意げで、奈緒の困った顔を見たがっているようだった。


しかし奈緒は彼女を素通りし、まるで聞こえなかったかのように通り過ぎた。


「何あれ?声かけてるのに、無視?」愛花は涙声で、早川智洋を見上げて訴える。


その横で冷泉慎也は苛立った様子で立っていたが、突然奈緒の腕をぐっと掴んだ。


「何するの?手を出すつもり?」奈緒の声が一気に冷たくなった。「番組のルールで、グループ同士の暴力は禁止されてる。今のは立派な暴力行為よ?」


場の空気が一瞬にして張り詰め、皆の視線が冷泉慎也の手元に集中した。彼は奈緒の手首を強く掴み、腕の血管が浮き出ていた。

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