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第42話 サプライズ

かつて共演した芸能人たちが次々と過去SNS上の交流記録を即座に削除した。

番組参加で「社会的に終わる」事例は愛花が初めてだと噂された。



B班の洞窟内。


奈緒がイノシシ肉を処理しながら、近くで摘んだ山菜を見せて言った。「豚汁を作って、野菜炒めもね」


克哉は美咲と目配せした。


「昨日仕掛けた罠を確認してきて」奈緒が低い声で提案すると、

「はい!」二人は待っていたように弾む足取りで立ち去った。傍らの夏葵も後を追おうとした。


「夏葵ちゃん」奈緒が突然呼び止める。


「はい?」振り返った夏葵の顔には疑問が浮かんでいた。


「占いを立てましょう」奈緒は静かに告げた。


夏葵は固まった。昨夜の嵐の予測や洞口の御札を思い出し、慌てて引き返した。「奈緒さん」と震える声で服の端を揉んでいた。


奈緒は彼女の顔をじっと見つめてから口を開いた。「近く運気が急降下します。間もなく厄災が訪れる」


「え?」不吉な予言に耳を疑った。

「どんな…ことが起きるんです?」夏葵が詰まる声で尋ねると、


奈緒は野菜を洗いながら答えた。「芸能生命を断つほどの大問題です」


夏葵が青ざめて凍りつく中、奈緒は続けた。「片思い中の男性がいますね。曖昧な関係で、彼はあなたを利用しているだけ」


「なぜ…?」夏葵の声が上ずった。


「彼は資源や利益を得るよう仄めかしていませんか?本気の相手じゃない」奈緒の指摘に、夏葵は沈黙した。思い当たる節が多すぎた。


「迷っている暇はありません。今すぐ縁を切りなさい。さもなければ破滅します」野菜を持った奈緒が去り、夏葵は陽に照らされた顔から血の気が引くのを感じた。拳を握りしめ、涙をこらえて克哉たちの後を追った。


カメラマンは驚いて視点を切り替えるのを忘れていた。


【は?マジ? 土下座でいいから誰か夏葵ちゃんの片想い相手の情報教えてくれ】

【女を利用する最低男だね】

【え、でもなんで奈緒が今このタイミングで暴露すんの? 生配信中だぞ 完全に夏葵ちゃんをハメにきてるだろ】

【わかる なんか狙ってやってる感じあるよな 奈緒わざとっぽい】

【気になって仕方ねえw】


視聴者たちは次々に転がるスクープに釘付けになった。ドラマより刺激的な生中継に騒然となる中、画面には罠で獲った野鶏を掲げた克哉たちが戻ってきた。


「奈緒さん見て!」小走りする美咲が傷ついた野ウサギを抱えた克哉を指さした。嵐を越えた彼らの表情は明るかった。


「ウサギ鍋にしない?」奈緒の提案に克哉がうなずく。


十一時過ぎ、朝食兼昼食の宴が始まった。ウサギ肉・野菜炒め・イノシシ肉の豚汁・炒め肉の香りにカメラマンも思わず唾を飲んだ。


「完食したら十キロ太るわ」と笑いながらも美咲は皿から目を離さない。夏葵と目が合い、彼女が奈緒を石の椅子に誘導した。


座った途端、花冠が頭に載った。野の花で編んだ冠に野イチゴが二つ添えられている。


「誕生日プレゼントです!」三人が野イチゴを捧げながら輪になって歌いだした。


「奈緒さん、お誕生日おめでとう!」


転生して戻ってきたとはいえ、彼女はいまもまだ二十歳の若い娘にすぎない。

誕生日祝いを受け取れば、やはり自然と嬉しくなってしまう。


美咲がウサギのもも肉を、夏葵が反対のもも肉を、克哉が炒め肉を次々と奈緒の椀に移した。


――ぽかんとしたまま、奈緒は手元を見つめた。


目の前に並んだ果実、頭に載った色とりどりの花冠、そして笑みを向けてくれる仲間たち。

胸の奥がじんわりと温かくなり、何かがこみ上げてきた。

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