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第51話 公開暴露

ネットが騒然となった。保険会社に直接問い合わせる者も現れる。


愛花は何も知らず、追いかけるカメラを見ながら内心絶望的に叫んだ。

「終わった…」


放送されれば、決定的証拠がなくとも彼女の評判は完全に失墜する。

彼女は保険会社の担当者を怨毒の眼差しで睨みつけ、今すぐ消えてしまえと願った。


「つまり、虚偽通報か?」警官が前に出て、厳しい口調で問い詰めた。


将史が即座に割って入ろうとしたその時、警官が手錠を取り出した。

愛花が恐怖で後ずさりし、「私じゃない…!誰かが私のスマホを盗んで電話したに違いない!保険なんて知らないよ!」と必死に言い訳した。


将史は歯を食いしばり、覚悟を決めて言った。

「故人は早川エンターテインメントの臨時スタッフです。会社は従業員に保険を掛けており、電話は私がかけました」


愛花はそれを聞くと、俯いて顔を覆い泣いた。

警官は嘲笑ったように携帯の画面を示した。


「これは生放送の映像だ。通報したのは彼女だ!警察官まで騙す気か!」


愛花は呆然と自分が電話している映像を見つめ、体がぐらりと揺れた。

「あの時……カメラマン付いてなかったよね…?放送も終了してたのに…なぜ流れたの?!」


人気のない場所は安全だと思い込んでいたが、島中に隠しカメラが設置され、彼女の本性はとっくに露呈していたのだ。


「皆さん、ここで何をしているんです?船から降りないんですか?」訝しげな声が突然響いた。


愛花が全身を震わせ、信じられない様子で振り返ると――

奈緒が黒のハイウエストパンツにシンプルなTシャツという出で立ちで、悠然と歩み寄ってくる姿があった!


「あ…あんた…死んだんじゃないの!?」愛花は恐怖で後退りした。


奈緒が口元に笑みを浮かべて言った。


「あら、死んでほしかった?高額な生命保険って、早川エンターテインメントが臨時スタッフにそんな保険を掛けるなんて聞いたことないけど?それに、この保険のことは私自身も全く知らない。早川さんがそんなに急いで保険会社に連絡するのは、昨夜私を海に突き落とそうとした人物が…あなただから?」


奈緒の眼光が鋭く核心を突いた。

愛花が恐怖に駆られ逃げ出そうとしたが、警官に阻まれた。


「関係者の皆さん、署まで同行して事情聴取をお願いします」警官はそう言うと、関係者をパトカーへ誘導した。


警察署での聴取後、周平はその場で拘留された。


昨夜、海岸で奈緒に薬物を撒き、残忍にも海に突き落として溺死させようとする様子が、高精細の隠しカメラに完璧に収められていたのだ。


周平は完全に動揺していた。「真夜中にまだ生放送してたのか!?…ち、違う!刑事殿、これは俺の仕業じゃない!」と慌てて言い訳した。


その言葉が終わらぬうちに、夏葵が入ってくる姿が見えた。


「私、周平に脅されたんです!」夏葵が目を赤くして証言した。

「彼は権力と契約内容を利用して私に奈緒さんを誘い出させ、隙を突いて危害を加えようとしたんです!私はでも途中でおかしいと気づき、殺人が起きるのが怖くて途中で止めたんです!」


夏葵は勇気を振り絞って真実を明かした。カメラマンが興奮しながら撮影を続けた。


この話題性、この視聴率!バラエティ番組の王座は確実だ!


「でたらめを言うな!」周平が慌てた。肝心な場面で夏葵に裏切られるとは思っていなかった。完全に掌握していると思ったからこそ、大胆に動けたのだ。


「証拠があります!彼が私を呼び出した時の会話を全て録音してます!これがその音声です!」夏葵はそう言うと、決然と録音データを提出した。


一瞬躊躇してから、さらに付け加えた。「警官、彼がこういうことをするのは…初めてじゃないと思います」


警官は録音データを受け取り、厳しくうなずいた。「詳しく調べます」


「夏葵!この裏切り者が俺を陥れるだと!?」周平は怒り狂ったが、警官に強く押さえつけられた。


絶望的に愛花の姿を探したが、彼女と将史は既に立ち去った後だった。「愛花に会わせてくれ!」と叫んだ。


しかし警官は微動だにせず、そのまま彼を拘束して連行した。


「奈緒は死んでないだろ!昨夜はただのゲームをしてただけだ!お前たちに逮捕する権利はない!」周平は無駄にもがき叫んだが、それでも連行された。


美咲と克哉も事情聴取を終え、近づいてきた。


「奈緒ちゃん凄い!あいつら今日必ず何かやるって分かってたから、昨夜戻ってから姿を見せず、今朝は私たちより早く船に乗ってたのね!」美咲は声を潜めて興奮しながら言った。


「まさか本当に奈緒ちゃんを殺そうとするなんて…でも殺人未遂だったし、証拠ないならあの女が犯罪に問われることはないだろうね」少し残念そうに付け加えた。


奈緒は笑みを浮かべ、美咲の頭を撫でた。


「例え実際に事故が起きても、早川家が彼女を助け出すわ。それに…」奈緒の声は冷たかった。「私は今すぐ追い詰めるつもりはないの」


前世、彼らに追い詰められて抑鬱の末飛び降り自殺した復讐は、ゆっくりと果たすつもりだ。愛花にも、苦しみもがき、社会的地位を失う味を味わわせる。ただ刑務所に入れるだけ?それでは甘すぎる!


「奈緒さん、ごめんなさい」夏葵が傍らで申し訳なさそうに謝った。昨夜、全てを打ち明けた後も奈緒は約束通り海岸へ向かい、わざと落水し、相手が去った後で泳いで岸に戻った。その後、皆で話し合い「偽装死」を決行し、今朝の愛花が有頂天になって保険申請する場面を演出したのだ。


「謝ることなんてないよ。今一番大事なのは…」奈緒は笑みを浮かべた。「帰る前に食事でもどう?せっかく陸に上がったんだし」


克哉が即座に手を挙げた。「美味しいすき焼き屋知ってる」


「行こう!」美咲が快諾した。


夏葵は恐縮した。克哉や美咲のような人物と食事を共にする日が来るとは思ってもみなかった。


奈緒の許しを得て、一行はタクシーで直行のすき焼き店へ向かった。彼らが警察署を後にすると同時に生放送は終了し、もどかしい思いを抱えた視聴者たちは真っ暗な画面の前で落ち着かない気持ちを抱えながら過ごすのだった。

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