2話 勅令。
「お前に、バン王、エミリア王妃、妖術薬師、3名の暗殺を命じる。これは勅令だ!」
「御意。しかと、承りました」
ウエルス国の侵略戦争が開始される、3日前の夜だった。
今夜のルノーン界は、月明かりもなく、秘密こうさくをおこなうには、絶好の夜だった。
シーンと静まり、自分の呼吸の音も気になるぐらいだった。
呪文、闇隠れを使い、バン王の暗殺をするために、寝室のバルコニーに忍んでいた。
だが、俺の秘密工作はバレテいて、逆に暗殺部隊が仕掛けた罠に掛かってしまった。
(俺の潜入に気付き、闇隠れを見破り、罠を張るとは……ウエルス国のアサシンはかなりの実力者だ……クソ。い、意識が……)
意識を失っている時だろう、手足の拘束をされて、マスクを外され、口を塞がれ、目隠しをされていた。
「ケェケェケー、隊長これを飲ませておけ。こいつはどうなってもいいのだろ?」
気色悪い笑い声が聞こえた! この声は昼間に聞いて確認が出来ている……ウエルス国の妖術薬師だ。
アサシンの部隊長にヤバそうな何かを渡したようだ。
「ドコに行くか楽しみだな。バート」
(死ぬなよ。バート)
「もう二度と会うことはないだろうな。サヨウナラだ」
敵国の部隊長に、塞がれていた口の隙間から、何かを入れられたようだ。
鼻を摘ままれ、飲み込まなければ窒息する状況だった。
〈ゴクッ〉
(チッ……作戦は失敗か、短い人生だったな。……クソッ)
全身に襲う激しい熱さ、痛み、吐き気に、手足を拘束されながら、のたうちまわっていた。
だが急に体が軽くなり、浮いている感覚を感じたあとに、体の感覚がなくなって意識を失った。
★★★★
意識を失っていた俺の体が光に包まれる。
〈あぁ。私の大切なバート〉
〈あなたに言葉の呪文を掛けておきます〉
〈効果が切れるまでに、その国の言葉を覚えなさい、頑張りなさい。私の可愛いバート〉
3話に続きます。