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第9話

9話 元アサシン、焼きイモ屋さんになる。(3)


 ゲントのコースなのであろうか? 走り出すと、すぐに車が停められそうなところがあり、まキをくめて石の温度を上げてから、下がるのを待っていた。

「バート、クエ!今日のイモはどうだ」

 先程、みよちゃんにプレゼントをした残りであろう、焼きイモを渡された。

 昨夜の腹が減っていた時と変わらずに、うまい焼きイモだった。

「うまいよ。毎日このうまさが出せるゲントは、職人なンダな」

 ゲントは、照れ笑いをしながら俺のことを見た。

「かわいそうだが、ドコの国から来たのか分からないバートを、元の国に戻してあげることは出来ない。だが、生きて行くちからを師匠がバートに教えるよ」

 ゲントに見付けられたこと、山島家の一員になれたことに、俺は感謝をした。

「さて、石もいい感じになってきたぞ。バートお前がやってみろ!」

 ゲントの見よう見まねだが、手袋をして石を掻き分けながら、イモを石の中に入れて、石を均等に被せた。

「準備OKだ! ゲント」

「ヨシ! 次に行くぞ」

 俺達は、みそらの宣伝放送を流しながら、次の販売場所に向かい、走り出した。


★★★★


 車の中では、俺のことを色々と聞かれた。

 不思議とゲントには、色々と話すことができた。

 俺はコジで、育ててもらったのが師匠のロギーだったこと。

 兄弟子がイて、兄弟のように育てられたこと。

 兄弟子は、任務中に行方不明になってしまったこと。

 大きな呪文はまだ使えないが、俺にも数種類の呪文が使えることなどを、移動中に話した。

 当然と言えば当然なのだが、移動中に何回か車を停めて、焼きイモの状態を俺にも確認させていた。

 俺は何故? ゲントが暗殺者になったのかを聞きたかったのだが、何故か聞くなと言っている俺もいて、聞くことが出来なかった。

 だが話の最中に、ゲントが所属している組織の名前が、シドウと言う、あんさつそしきだと言うことを知ることが出来た。

 あと3日もすれば、俺が日本で過ごせる資格のような物が、届けられることを知らされた。

 話をしながらだったので、気付かなかったのだが、この道は今朝……。

 まさかと思ってゲントを見ると、ニヤリと微笑んで、悪い顔をしていた。

「バート、今日の販売はここが最後だぜ!」

 親指を立てて、ヤル気満々な顔をしている。

「了解だ! ゲント」

 俺も親指を立てて、ヤル気満々の顔をした。

 ショッピングモールの近くに俺達は、車を止めた。


★★★★


「宣伝放送のセリフは覚えたか? バート」

「セリフシートは見たから、バッチリだ! ゲント」

「10分が勝負だぞ!」

「大丈夫だ! 任せてくれ」

 ゲントは放送用の機械の調整を済ませると、マイクと言う機械を俺に渡した。

 俺の呪文が機械で伝えられるのか? 分からなかったが、試しに呪文、みわくを唱えてから宣伝放送を始めた。

「いしやぁ~きイモ、おイモ、おイモ、おイモだよ~ぉ」

「さーぁ、いらっしゃい! お仕事お疲れ様でしたぁー」

「お姉さま方々、焼きイモ屋ゲンちゃんの天国に行けちゃうような、甘~い焼きイモはいかがですかぁー」

「ハイハイ、そこのお兄さん。奥様、パートナー、彼女、お子様のお土産にいかがですかぁー」

「早くこないと、いっちゃうよ~ぉ」

 ゲントに、ふサいでいた耳を開けてもいいと、合図を出した。

 ゲントも外に出て、販売の準備をして、お客様を待っていた。

(……あれ? 呪文の効果は、なかったのかな?)

「バートさーん、甘~い焼きイモくださーい」

(おや? 名前で呼ばれたぞ)

 呼ばれたほうに振り向くと、ファッションやまむらの店員さん達だった。

 俺は満面の笑みをして、ファッションやまむらの店員さん達を迎えた。

「いらっしゃいませ~ぇ。お客様~ぁ、美味しく甘~い焼きイモをどうぞ~ぉ」

 そのごは順調に、お客様にご購入をしていただけまして、本日の販売分は、終了しました。

(呪文、みわくの効果があったのか、分からなかったけどね)

 だって、お客様の半分以上がげんとのお客様だったし……。

 俺達は最後のお客様を見送り、車の周りにゴミがないかの確認をして、1礼をしてから車に乗り込んダ。

「さて、バート。今日はもう上がるぞ~ぉ! お疲れ~ぇ」

「了解だ、ゲント。お疲れ様」

 今日は普段より、2時間と言う時間ほど、早くに上がれたようダ。

「今日は早くに上がれたから、グイッと一杯、やっちゃうかなぁ~」

 ゲントは嬉しそうな顔をして、車を家へと向かわせた。


      ・


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「まえまえから思ってはいたが、おかしら様はネーミングセンスがな~ぁ」

 ゲントは言っていたが 俺には、とてもいい名前だと思っていた。

 漢字と言うもので書くと、ヤイバのアトでバアトなんて、アサシンには最高の名前じゃないかぁ~。

 あっ、と言う訳で、本当に3日後、俺は、ヤマシマバアトと言う名前で養子の扱いとなり、ヤマシマけの一員となった。

(今の技術では、見破れないほどの偽造らしいけどね)


10話に続きます。



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