10話 元アサシン、みそらと約束をする。
本日も販売が終わり、俺達は家に向かっていた。
ゲントが言うには、俺が店員になってから売れ残りが少なくなり、早く帰れてとてもいい感じだと言っている。
「バート、明日と明後日、みそらのことを頼むな」
「ああ、みそらのことは了解だが、ゲントは大丈夫なのか? ゲント……俺も」
「大丈夫だ。バート」
今回のターゲットは、信者と呼ばれる者の幸せを壊し、多額の金銭や財産の請求をする、『クソ坊主一家』だと、ゲントは言っていた。
元の国でもそう言う教団があり、師匠のロギーと、仲間が壊滅させたことを、自慢話として聞いていた。
(国が変わっても、そう言う奴らは居るようだ……)
「キッチリ、ターゲット全ての煩悩を断ち、涅槃へと導いてやるよ」
ゲントの目つきが鋭くなり、親指を立てて、そのまま下に向けてニヤリと笑った。
★★★★
家に着き、シャッターを上げて、車を止めてシャッターをおろした。
「シーン」
シャッターの音がしても、今日もみそらの出迎えがない。
この1週間、部屋で何かをしているようで、呼ぶまでリビングにオりて来ない。
「バート、スマン。みそらを呼んで来てくれ」
ゲントに頼まれ、みそらの部屋へ向かった。
★★★★
みそらの部屋は、俺の部屋の向かいだ。
静かに何かをしているようなので、呪文、集音を使い、何をしているのかを探った。
「一緒に行ってくれないかなぁー、バートのこと、どう誘おうかなぁー、来てくれると、いいんだけどなぁー」
お、俺を何かに誘おうとしているようだ。
1週間もかけて、何をしているのだろう……みそら。
とりあえず俺の部屋のドアを開けて、帰宅した音を鳴らしてから、みそらに声をかけた。
「みそら~ただいまー、ゲントと帰って来たぞ~。夕食にしようぜ~! 腹がへったよー」
「すぐに行くから、リビングで待っていてー」
返事を聞いたので、俺はリビングに向かった。
★★★★
リビングに行くと、ゲントが食材を持ち、夕食の準備をしている。
「あれ、今日はゲントが夕食を作るのか?」
「みそら、何か忙しそうだからな。今日はモダン焼きだ」
そう告げて台所に入ると、手早く野菜をきざみ、大きなうつわに入れて、粉のような物をふるい、ネットリとしている液体を作っている。
「ホットプレートを用意してくれ~。バート」
俺に教えるためだろう、ゲントがホットプレートと言う物を指差した。
「了解だ。ゲント」
大きな箱からホットプレートを出して、ゲントに配線の仕方を教えてもらい、通電をさせて待っていた。
「ゲント、煙が出てきたぞ。大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、油を全体に伸ばしてくれ~。ヨシ! 行くぞ」
大きなうつわをテーブルに乗せて、具材タップリなドロッとした液体を、ホットプレートの上に乗せている。
「げ、ゲント。こ、これは食べ物なのか?」
「これはモダン焼きだから、具は全部、中に入っているんだよ。ま~見ていろ、バート」
見たことがない金属の何かを使い、ゲントが調理を始めた。
(あれ? 見た感じからは想像も出来ないけど、美味しそうな匂いがしてきたぞ~)
匂いに釣られたのか? みそらが二階からオりて来た。
「父さん、バート、ゴメンね~。うわぁ~、今日は久々に父さんのモダン焼きだぁー」
ニコニコしながら、みそらも椅子に座った。
「なぁ、みそら、あれは食べ物になるのか? ゲントの使っている金属はなんだ?」
みそらの耳に手を充てて、小声で尋ねた。
「父さんのモダン焼き、美味しいんだよ~。金属の? あれはヘラって言うんだよ……確か?」
ゲントの調理動作を見ていて、あれは任務で使えそうだぞ! と、考えている俺がいた。
「ヨシ、出来たぞ~。みそら、飲み物を用意してくれぇー」
最後の仕上げだろうか? ソースと少量のケチャップを、ホットプレートの上で混ぜている。
ヘラですくい、モダン焼きと言う食べ物に乗せて、綺麗に伸ばして広げている。
マヨネーズを綺麗にかけると、青のり、鰹節を乗せて完成のようだ。
「さぁ~食え! 焼きイモ屋ゲンちゃん特製のモダン焼きだ~ぁ」
ゲントはビール、俺とみそらはラムネを持った。
3人そろって『いただきまーす』楽しい夕食を食べ始めた。
げんととみそらは、上手にヘラを使って食べている。
2人を見習い、俺もヘラを使って食べてみた。
(あ、あっちイ~ぞ。2人は熱くないのか? でも、うまいぞ、これ! 外はカリッとしていて中はフアフアだ~。具材もタップリだ)
ゲントとみそらは、明日と明後日の話をしているようだ。
「同窓会だもんね、楽しんで来てね。お土産ヨロシクー」
「みそらを頼むな。バート」
「了解だ、任せてくれ。ところでゲント、このモダン焼き、おかわりは出来るのか?」
尋ねた俺を見たみそらが、ニコニコ笑顔でゲントに向かって手を上げた。
「みそらのブんとバートの分の、おかわり入りましたぁ~」
ゲントは嬉しそうに、ニコリと微笑んで、2枚目を焼き始めた。
結局、俺は4枚、美味しくいただきました。
「ゲント、片付けは俺とみそらでやるから、今日は風呂に入って旅行、〈任務〉の準備をしてくれ」
「なら、あとはヨロシクな」
自分が食べた皿とヘラとうつわを洗って、ゲントは二階に行った。
みそらはまだ食べているので、俺も自分の皿とヘラを洗い、ゲントが忘れたコップとビールを片付けた。
「ホットプレートは片付けても大丈夫か? みそら」
「うん、もう皿に乗るから大丈夫だよ。バート、ありがとう」
ホットプレートを洗ってキッチンペーパーで拭いてから、箱に入れて片付けた。
リビングに戻り、椅子に座り、テレビをみながら、みそらの様子を伺っている。
ゲントが二階に上がってから、みそらが俺のことをチラチラと見て、様子を伺っているのは気付いていた。
「あっ、あのさぁ、バートは明日と明後日は、何をしているの?」
キタ! さっき呪文、集音で探っていたことだろうか。
「明日か? 焼きイモ用の石を洗って乾かすだけだぞ。明後日は、特に何もないかなぁ~?」
俺はチラッと、美空に視線を送った。
「えっと~、えっとねー」
俺に何かを言いたそうに、モジモジしている。
(う~ん、じれったいぞ。みそらー)
「ちょ、チョッと待っていて」
みそらは二階に上がり、何かを持って戻って来た。
「バート、これを見て」
緊張しているのか、みそらの手が震えていた。
渡された紙には、同人即売会! コミックターゲットと書いてあり、コスプレOKの文字が書いてあった。
「スマン、みそら。書いてあることは読めるが、俺にはまだ、コミックターゲットが分からないんだ。コスプレOKとはなんだ」
みそらからは見えないが、ハテナマークをたくさん頭の上に出しながら、今の俺に出来る、最高の笑顔で美空に尋ねた。
俺の笑顔を見て、モジモジしながら顔を赤くして、みそらが説明を始める。
「コミックターゲットはね、同じ物が好きな人達が集まり、同人誌と言う本を作って販売したり、交流をしたり、楽しいことをする場所なの。みそらはコスプレが好きなの。みそらの好きをバートと楽しみたいんだけど、一緒に行かない」
どうやらみそらは、俺とコスプレと言うことがしたいみたいだ。
あれ、コスプレ? チョッと前に、このフレーズをみそらとげんとから言われたぞ? 確か、俺のアサシンスーツを見られた時に、言っていたような気がする。
「え~とみそらさん。コスプレって、みそらさんは、アサシンになりたいのかな?」
「そうなの~。みそらがプレーしているゲームのキャラなんだー」
マズイぞ!! みそらがアサシンに、なりたがっているじゃないかー。
(これは、ゲントに相談しないとマズイことだぞ……ん、ゲーム? キャラ?)
「みそら、ゲームって何? キャラって何?」
「バートは、そう言うことあまり知らないんだね」
(知らないよ。俺はこの国に、どうやって来たのかも分からないんだから、みそらさん)
「ああ、俺の家はあまり裕福ではなかったからな! スマン、みそら。分からないんだ」
みそらは、急いでモダン焼きを口に入れて、皿とヘラを洗って、俺の手を掴むとニコリと微笑んだ。
「バート、みそらの部屋に来て!」
俺は、みそらの部屋へと連れていかれた。
★★★★
(マ、マジか!! みそらの部屋に入れるなんて……バート兄さん嬉しいぞ~)
ドアを開けた瞬間に、17才男子の○○○をコントロールするのが大変なぐらいの、とてもいい香りが部屋からした。
だが、いい香りとはうらはらに、みそらの部屋は|ひどく散らかっていた。
「みそら、俺で良ければなのだけど、部屋の掃除をしてやろうか?」
「イヤァ~ン、バート。普段はきれいに片付いているよー! この1週間コスプレの衣装を作っていたから、散らかっているんだよ~。これ見て」
何かの書物を渡されたので、パラパラとめくり、見てみた。
そこには、色々なアサシンスーツのデザインや、任務で使うような、しぐや防具の説明が書いてあった。
「みそらさん……こ、これは、なんだ?」
「ゲームの攻略本だよ。このゲームのコスプレを、みそらはしたいのー」
あっ、そー言えば、さっきゲームと言っていた。
「みそら、ゲームってどれ?」
座るすぺーすをつくっている、みそらに声を。
あれ? 俺は見てはいけない物を見てしまったのだろうか? とても見馴れたアサシンスーツが。
ダッシュで自室に戻り、片付けていたアサシンスーツを……。
なっ、ないぞぉー! ならアレは俺のアサシンスーツだぁー。
みそらめぇー、勝手にアサシンスーツを持っていったな~。
(任務で使うしぐるいを、外していて良かった)
ダッシュでみそらの部屋に戻り、みそらに尋ねた。
「みそら、そのアサシンスーツは俺のなのか?」
「うん。良く出来ているな~と思っていたから、お手本にさせてもらったの」
みそらは手を合わせて、頭を下げて謝っている。
おころうと思ったのだが、謝っているみそらを見たら、おこることが出来なかった。
「みそら、アサシンスーツが見たいなら、ちゃんと言ってクレよな。みそらだって、みそらのかわいい下着が俺の部屋から出てきたら、ビックリするだろ」
少しエロイ顔をしながら、みそらに視線を向けると、ミソラは顔を真っ赤にしながら、うつむいていた。
「ゴメンね。バート」
「うん、いいよ。みそら」
そのご、みそらの機嫌をとりながら、みそらがコスプレをするゲームのキャラクターで遊ばせてもらい、コスプレの説明を受けた。
(そうか、そうか、このゲームのシチュエーションと言うのを再現している、写真と言う物を残したいのかぁ)
「バート、見てぇー、これがみそらの衣装だよ。カっこういいし、かわいいでしょー」
出来立てホヤホヤの衣装を見せてくれたのだが……。
「こ、このアサシンスーツをみそらが着用するのか?」
おいおいみそらさん、あなたは自分のナイスなボディーをご存知ですよねぇ~。
ゲームだから走ったり、ジャンプしたりしても大丈夫だったけどさぁー。
コスプレ会場と言うところで、ミソラさんがそんなことをしたら、そのタワワなオパーイ様が、アサシンスーツからポロリンしちゃいそうじゃないか~と、心配だった。
「何時に家を出るんだ、早いなら、石を早くに洗っておかないとならないからな」
「一緒に行ってくれるの?」
あんなセクシーなアサシンスーツを見せられたら、一緒に行かない訳にはいかないだろ~。
「いいぞ。一緒に行こう!」
「明日は11時に電車に乗りたいから、10時30分には家から出ないとね!」
「了解だ! 10時までに石を洗って、乾かしておくよ」
「有り難う、バート。明日はヨロシクね」
「じゃ~、明日なみそら。ふろ、先に入るな」
部屋を出て、自室に戻り、風呂の準備をして部屋を出た。
11話に続きます。