12話 元アサシン、みそらとイベントへ行く。〈2〉
駅に向かいながら、ミソラから色々と説明を受けている。
ウィッグでショートヘアになっていること。
メイクで今の顔になっていること。
カラーコンタクトと言う物で、目の色が変わっていること。
衣装は小さなタイヤが付いているキャリーケースと言う、みそらが引いている物に入っていることなど。
みそらの楽しいは準備が大変なようだ。
★★★★
駅と言うところに着いたようで、みそらは周りを見ている。
「りょうちゃーん」
「ミーちゃん」
2人は待ち合わせをしていたようで、みそらが時間を気にしていたことが分かった。
「みーちゃ~ん、そちらの人は誰なのかなぁ! 彼氏?」
みそらの友人が品定めをするように、ニヤニヤしながら俺のことを見ている。
「違うよ~。父さんのおでしさんのバートだよー」
俺はこの時、初めて知った。
ゲントはまだ、俺が養子になったことを、みそらに伝えていないようだ。
「今日は、バートも一緒だから宜しくね。リョウちゃん」
「ハーイ。ミーちゃん、バート君、今日は宜しくネー」
「宜しく頼む。リョウちゃん」
俺達は電車と言う乗り物に乗り、イベント会場へと向かった。
★★★★
ゲントとの仕事の移動中に見て、聞いていた電車と言う乗り物に乗れたことだけで、俺のテンションは爆上がりだった。
(こんなに多くの人を移動させることが出来るとは……電気はどのように作るのか俺には分からないが、鉄ならタガーイこくが造れば、この巨大な乗り物は造れるかも知れないな!)
40分くらい電車に乗り、そろそろイベント会場近くの駅に着くようだ。
(本当に、この国は凄い国だ! ルノーン界のどの辺りにある国なんだろう? 広い水の地帯が地図にはあるが、水の地帯の先にある、地図にも描かれていない場所にある国なのかな~?)
そんなことを考えていて、電車から降りずに居ると、あっ、と言う間に目的地に着いていたようで、慌てたみそらに手を引かれ、電車を降りて会場へと向かって、歩いていた。
……手間の掛かる兄でスマンな、ミソラさん。
(だが、俺は元アサシンだ! 歩いている時に、このイベントに行く人達がすぐに分かったぜぇ)
何故なら、みそらとりょうちゃんが引いているキャリーケースを引いている人達が多く、同じ方向に向かい、歩いているからだ。
キャリーケースを見ながら歩いていたので、視線を上に向けると、目の前には巨大な三角形がひっくり返り、脚を伸ばして立っていた。
(おいおいおい、なんだよ、この巨大で立派な城は! 俺達はここに行くの? この国の王と会えるの?)
「み、みそらさん。俺達は、この大きなしロで遊ぶのか? この大きなしロには、王は居るのか?」
ゲントから〈しロや王のことをあまり人には言わないように!〉と注意をされていたのに、俺の気持ちは熱く高鳴り、思わず聞いてしまった。
「みーちゃん、バート君って面白いネー。なりきるのは中に入ってからね」
「リョウちゃん、バートの衣装も凄い仕上がりなんだよ」
「フムフム、楽しみにしているよバート君。あ、王様は居ないからネーぇ……笑」
「……ふ~う」
どうやらイベントのテンションのお陰か? 変に思われずに済んだ。
俺達はイベント参加の手続きを済ませて、コスプレの準備のために更衣室のところで別れた。
★★★★
更衣室に入って着替えていると、知らない人から声を掛けられた。
「その衣装、凄い仕上がりですね~。会場で会ったら写真を撮らせて下さい」
「は、はい。どうぞ……。汗」
俺は急いで準備を済ませて、更衣室前でみそらとリョウちゃんを待っていた。
「ねぇねぇ彼、凄いイケテない?」
「うん、イケテるし、衣装も凄いネぇー。何のコスプレなのかな~ぁ? 会場で会ったら、一緒に撮影させてもらおうネぇー」
(う~ぅ……呪文、集音を使わなくても聞こえてくる話が、俺には恥ずかし過ぎる。コスプレ会場で着用しているが、コレは本物のアサシンスーツだ)
「バート君、凄い衣装だネー、ミーちゃんが言っていたとおりだネー。かっこいいよ!」
先に出てきたリョウちゃんから、声を掛けられた。
「リョウちゃんの衣装も……あっ、イケてるね!」
(これで返しは、いいんだよな?)
「ありがとう、バート君。みーちゃん、すぐに来るから」
リョウちゃんは、俺のアサシンスーツを触りながら、色々な確認をしていた。
(昨夜見た、みそらの衣装もだったが、リョウちゃんの衣装も、かなりのきわどい物だった。見る気はなかったぞ! なかったんだけど……スマン、リョウちゃん)
「遅くてゴメンねぇー」
振り向くと、昨夜見せられた衣装を着た美空が現れた。
かっこいいし|かわいいぞみそらさん。
でも、バート兄さんが心配をしていたように、なっているじゃないか~。
歩く度に、そのタワワなオパーイ様がアチコチに動いて、アサシンスーツからポロリンしてしまいそうに、なっているじゃないか~。
「どう? りょうちゃん、バート」
みそらは、手作りであろう死具を持ち、ポーズを決めて俺達に見せた。
「みーちゃん、凄いねぇー。チョ~決まっているよ~!」
「ありがとう、リョウちゃん。リョウちゃんの衣装も、かわいいねぇー」
ワチャワチャしていて、とても2人は楽しそうにしている。
今日は、みそらとリョウちゃんの楽しいことをさせてあげることが、俺の任務だな。
「みそら~、似合っているぞ。かっこかわいいアサシンだ! さて、みそらとリョウちゃんの、楽しいことをしに行こう」
2人を誘い、俺達はコスプレ会場へと向かった。
13話に続きます。