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第15話

15話  元アサシン、バート事実に迫る。


 俺も風呂から上がり、みそらが持って来た、シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズの攻略本を受け取った。

「みそらは、このゲームが本当に好きなんだな!」

 持ってきた本の多さに、俺はビックリさせられた。

「うん、好きだよー。みそらはねー、ばんうちいパプコさんのゲームが好きだから、多いかなぁ」

「なら、貸してもらうな」

「うん。バート、お休み~ぃ」

 みそらが部屋に戻ったので、まずはシップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズの本を手に取って、若い頃のロギー服部の武勇伝が書いてあるのを見ていた。

 シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズは、師匠がアサシンとしての10年間のことを追体験する、ゲームだったようだ。

 心の準備は出来ていたが、やはり俺はこのテレビゲーム、シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズのバート服部だった。

 俺とタクマが聞かされていたことが書いてあり、聞かされていなかったことや、仲間達の偉業も書いてあった。

 俺達の任務は、なければないほどいいことなのだ! だがテレビゲームの中では、俺達の存在意義や必要性などが書いてあり、少し誇りに思えた。

 師匠の親友、ハーサンのことや、兄弟子のタクマと俺が経験した、幼少の頃のことも、間違いなく書かれていた。

「ふう~~ぅ」

 大きく息を吐き、次のページをめくると、イベントでみそらとリョウちゃんがしていたコスプレの、アサシン2人のことが書いてあった。

 読み続けていると、とんでもない事実が書いてあった。

「え~え~え」 

 み、みそらって、おっ、俺の母さんだったのかぁー! イヤ、イヤ違う、違う……勘違いするなよ、落ち着け俺。

 元の世界でのことだぞ! みそらはイベントでのコスプレだ。

 幼少の頃に師匠から、お前の母は美しく強い女性だったと聞かされていた。

 俺の母は、奴隷救出の勅令を受けて、捉えられていた女の子達の救出に成功したのだが、最後に逃げていた女の子を庇い、大怪我を負ってしまい、絶命寸前だったようだ。

 そこに師匠が現れ、最後に逃げていた女の子の無事を確認したあとに、まだ話すことが出来ない幼い子供を頼み、絶命したようだ。

 母さんは、俺のことをちゃんと師匠に託して亡くなったんだ。

(う~ぅ、美空~……じゃなくて、エリー母さん。生存中にエリー母さんと呼んであげたかったよ)

 リョウちゃんがしていたコスプレのアサシンは、ハーサンの娘さん、エミリーオバさん・・・・お姉さんだったんだな。

(若い頃の母さんとエミリーさん、いい意味で凄いスーツを着用していたんだな~。にがわらい)

〈チュンチュン、チュンチュン〉

 外で鳥が鳴き出した。

 縦開きのブラインドカーテンを開けると、外が明るくなり始めていた。

 攻略本を置き、窓を開けて大きく伸びをした。

 シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズツーは、発売されたばかりだから、まだ2冊しか攻略本は出ていないことを、みそらから聞いていた。

「残りは2冊だ」

 部屋を出て台所に向かい、コーヒーを入れて飲み、気持ちを落ち着かせた。

「さて、トイレを済ませて続きを読むかー」

 コーヒーカップを洗って、二階に上がった。


★★★★


 部屋に入り、攻略本を手に取り、一息してから読み始めた。

 シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズツーだ。

 タイトルが長いので、アサマズツーとした。

「さて、ここからは俺のことが書いてあるはずだ」

 アサマズツーからは、ロギー師匠と兄弟子タクマと俺のことが書かれているようだ。

 俺は自分のことより、行方不明になっていたタクマのことが気になって、読んでいた。

「そうだったのか……タクマ」

「わざと捕まり、妖術薬師に洗脳をされた振りをして、7年間もウエルス国の情報を、イグニス国や他国に流してくれていたのか……」

 俺に物心が付いた頃、タクマニイは、食事中に師匠から、毒の耐性を付けるために、少量の毒をせっしゅさせられていた。

 毒のために、熱や吐き気や体に痛みが出て、苦しんでいる時もあった。

 俺が、師匠に辞めて欲しいと頼んでも、受け入れられなかったのは、タクマニイには勅令が出ていたからだったんだ。

 タクマニイを死なせないために……師匠は……。

 師匠も辛かっただろうな……俺達を本当の子供のように、可愛がってくれていたからな。

 俺の目からは、大量の熱い何かが流れていた。

「生きていてくれて、良かったよ。タクマニイ」

 ティッシュを取り、熱い何かを拭き、鼻水をかんデ自分のことを読み始めたのだが、追体験をするゲームなら、成功していた任務のことは飛ばすことにして、確信に迫った。

 俺は未熟者だ……俺の潜入は、しロに潜入してから3の時にはバレていた。

 タクマニイへ、返り討ちの勅令がバン王から出されて、万全の罠が張られていたようだ。

(全く恥ずかしいものだ。自分のしゅうタイを説明されながら、知っていくと言うのは……)

 暗殺予定のバン王、エミリア王妃、妖術薬師の3名の寝室を探っていた最中に、バレテいたようだ……。

 どうやら俺は、ウエルス国の妖術薬師が開発した新薬を使った毒針を、タクマニイに撃ち込まれてしまったようだ。

 意識を失っていた最中に、手足の拘束をされて、マスクを外され、口を塞がれ、目隠しをされていた。

 俺のルートは、ここでタクマニイに何かの液体を飲まされて、今この状況になっているみたいだ。

 攻略本を読んでいて、どうしても気になっていることがあった。

 タクマニイの最後の言葉だ。

「何処に行くか楽しみだな。バート」

(死ぬなよ。バート)

「もう二度と会うことはないだろうな。サヨウナラだ」

 この言葉の意味だ! 俺は、ここで死ぬ予定だったのだろうか? 俺を逃がすために、危険なリスクを負ってでも、薬をすり替えて、俺を他国へ逃がすために、あの液体を飲ませたのであろうか。

〈コンコンコン〉

「バート起きている? 朝食が出来たよ」

 みそらから声を掛けられたので、時計を見ると午前9時を過ぎていた。

「起きているぞ~みそら~。したに行くから待っていてくれ」

 俺は2冊の攻略本を持ち、リビングに向かった。


★★★★


「おはよーう、バート」

「おはよーう、母さん じゃなかった。みそら」

(バカか俺は、しっかり引きずっているじゃないか……汗)

 朝食は、サケを焼いた魚の切り身に俺の好きな甘めの玉子焼き、大根の味噌スープに漬物と、もちムギ飯だった。

 朝食を食べ終えて、洗い物を終えたみそらが、台所からリビングに戻って来た。

 俺は意をけっして、みそらに尋ねた。

「みそら、スまン。このカッコの部分は、どう言う意味なんだと思う? 俺は読むことはなんとか出来るが、言いたい意味が、まだ良く分からないんだ」

 みそらに攻略本を渡すと、みそらが声を上げた。

「あ~あバート、よだれを垂らしていたなぁー。よだれで本がよれちゃっているじゃ~ん」

「……スマン。みそら」

(俺の熱い何かで、なっちゃっていたみたいだ……。ゴメン)

 みそらは、攻略本を頷きながら、しばらく読んでいた。

 タクマルートの最後がまだ書かれてないから、分からないと言われた。

 だがみそらは、俺にこう教えてくれた。

「多分、バートルートのタクマは、バート服部のことを助けたかったんじゃないかなー? だってバート服部の追い込みの全てをタクマがしているしね! 自分が行えば調整が出来るからね。(死ぬなよ。バート)と、心の中で願っているみたいだしね」

 みそらの説明を聞いていて、俺はまた熱い何かが目から流れていた。

「ナニ? バート、泣いているの? 大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。目にゴミが入ったんだ」

 素早くティッシュを取り、みそらに気付かれないように、目を隠した。

「有り難う、みそら。意味が分からないと読むのも大変なんだな日本語。少し寝るよ、攻略本ありがとうな」

 俺達は二階に上がり、みそらにアサマズツーの攻略本だけを残して、感謝を伝えて返却をした。

 俺は少し寝ようとしたが、イベント会場で言われたことが頭に浮かんだ。

〈シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズスリーには、バート、出るんですかねー〉

 俺は今、ここに居るのだが……。

 もし、シップウ ゲキレツ アサシンズ マスターズスリーに、俺がキャラクターとして登場するなら……。

 この世界から俺は、消えるのだろうか……。

 考えていたのだが、知らぬ間に俺は眠ってしまったようだ。


16話に続きます。


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