二か所目の陳情先は、三か所目と四か所目に非常に近いうえ、陳情内容もほとんど同じだった。
それならまとめて書類を出してくれればよかったんだけど、って言ったら、彼曰く、ほったらかしにしてるうちに、時間差で問題が発生してしまった様子。
それじゃあ仕方ないわね。こちらの手落ちだわ。めんぼくない。
というわけで、お悩みの内容はというと、水不足。
「ねえ、どう解決するの? まさか雨ごいでも?」
「湖が干上がったわけではないので、祈祷など致しませんよ」
「じゃあどうする?」
「お嬢様なら、どう解決されますか?」
「魔法なしで?」
「まずは魔法なしで、お考えください」
なんだろう、これって教育なのかな。
私、大国の宰相に政治家として育てられてるってこと?
皇帝のお妃にそんな能力要らないのでは……。
とはいえ、これはいい機会だわ。がんばらなくちゃ。
「ええと……たしか、三つとも井戸が枯れてきて、遠くの川まで水を汲みに行ってるって話よね。そのせいで町の商店の営業に差しさわりが出てるって」
「そうですね。あそこは細工ものの工房もあって、作業に必要な水を確保出来ないとも言われておりますね」
「きっと困っているわね。でもいきなり井戸の水を満たすことも出来ないし……」
「いかが致しましょう」
「うーん……。そうね、川の水をなんとか引いてこれないかしら」
「では地図で確認いたしましょう」
「ところで、どうしてこの地図こんなに詳しいの? それに空から見たみたいに正確だわ。これも、魔法?」
「まあ、魔法の一種でございますね。とはいえ帝国ではこれも一般的な技術のひとつではあるのですが」
帝国の技術、ヤバイ。
そんな国に侵略されたら、絶対勝てないし。
マジでヤバイ。
「う~ん……やはり、川は遠いわね。水路を作るには大勢の人手が必要だから、すぐには出来なさそう……。水を運搬する馬車でも用意したらいいのかしら……。でもそれでも足りないわよね、きっと……。新しい井戸を掘っても水が出るとは限らないし……ううん……」
ひとが頭をひねってウンウン言ってると、ムカつく魔導師がニヤつきながら私を見ている。やっぱムカつく。
「確かに、もっと以前であれば、水路を作るという手段も新規の井戸を掘ることも、あるいは可能だったでしょうが、ここまで切迫している状況では取れる手段とは言い難いですな」
「やっぱそうよね。手遅れ、ということなのかしら……。そうだ、じゃあ、川の近くに引っ越すとか」
「住宅などであれば検討してもよい選択肢かもしれません。しかし、あの川は蛇行しており、雨量によっては氾濫の恐れもあります故、川岸に住むなら慎重に場所を選ぶ必要がございますな」
「ああん、じゃあどうすればいいのよぉ~~」
「そうですねぇ……」
魔導師は服のポケットから数本の小瓶を取り出し、中身を確認すると、窓をあけ、中身を馬車の外に捨てた。
「え、今なに捨てたの?」
「捨てたのではありませんよ。外に解き放ったのです」
「な、なにを?」
「人工精霊です」
「人工精霊……?」
って、なに???