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第14話 無人島ざまぁ地獄

「お、おい……!? ここはどこだ!? 誰かいないのかっ!」


目を覚ました王太子レオナードは、荒れた海風に煽られながら、周囲を見渡した。 海、海、また海。見渡す限り、青い波が岩場を打ちつける。


彼の足元は、わずか一平方メートルほどの岩礁だった。周囲に陸地は見えない。潮が徐々に満ち始めており、冷たい海水が足元を濡らしている。


「な、なにこれ!? どういうことだ!? ここは……無人島!? いや、島ですらないっ……岩だ、ただの岩じゃないか!」


狼狽するレオナードは、四つん這いになって岩の上を這い回る。 「助けろぉぉぉぉっ!!」


だが、返事はない。


ふと彼の視界の先、海の彼方に黒々とした影が見えた。 大きな船。いや、それは魔王軍の巨大な軍船だった。甲板では、魔族たちが思い思いに楽しそうに酒を飲み、肉を焼いていた。


「おいっ! そこの船! 助けろ! 王太子の命令だ! 聞こえてるだろう!? この俺をここから出せえええ!!」


彼の叫びに、船の甲板で魔族たちが望遠鏡を向け、口々に笑う声が返ってきた。


「おお、動いた動いた」 「王子様、いい感じで蒼ざめてきたな」 「満潮はもうすぐ。腰くらいまでくるぞー」


「な、なにぃ!? 満潮!? ま、まさかこのまま水が……! お、おぼれ……死ぬ……っ!」


水かさはすでに膝を超え、足元は波に洗われて滑り始めていた。レオナードは必死でしゃがみ込み、岩にしがみつく。


「ふざけるなぁっ! 貴様ら、俺が誰だと思っている! 王家の第一王子ぞ!? 未来の国王になる男ぞ!? こんな仕打ち、ゆ、許されると思っているのかっ!」


その様子を、アリステリアは静かに魔法鏡で眺めていた。


「ふふ……少しは性根を叩き直せましたかしら」


魔法鏡の隣では、ミレイユが紅茶を淹れていた。


「女王様。あの方……本気で震えておられます」


「私は女王ではありません。これ以上、そう呼んだら──紅茶、抜きですわよ」


「はいっ! 喜んで従いますっ!」


アリステリアは鏡に映る王太子の哀れな姿を見つめながら、呟いた。


「死なせるつもりはありません。ですが、彼が自分の罪を理解するには……この静かで孤独な岩の上が、最適な教育の場ですわね」


実際、潮位が最も高くなっても水は膝上まで。 しかし、それを知らぬレオナードは、死を覚悟していた。


「うああああああっ!! 誰かああああっ!! 助けてぇぇぇぇっ!!」


空しく波の音が響く中、彼の悲鳴だけが岩場に木霊するのだった。






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