ゆらゆらと船の上で揺られながら、コロウたちは魔王の待つ島へと向かっていた。
「これが魔王の島か……」
コロウが操舵席の先に見える、雷鳴轟く小さな島を見つめる。
「ここに……魔王がいるんだね、クライス」
ルーシェは小さく拳を握り締めた。
「クライスなら大丈夫よ。タフだから」
ロイスが優しくルーシェの肩に手を置き、慰めるように言う。
「そろそろ島に着きます。準備ができたら上陸の合図を」
ボルケーノ王国兵の声が船内に響いた。
「……上陸してください!」
ルーシェの声に呼応し、何隻もの船が荒れ狂う波をかき分けて魔窟の岸に乗り上げた。
「みな、武装の準備を」
コロウは鋼の決意を込め、鎧を装着し銃や剣を握り締める。
大粒の雨が降りしきる中、兵士たちが続々と上陸していく。
「これより、魔窟内部へ侵攻開始!」とコロウが叫んだ。
「魔窟は小さい!すぐに魔王が見つかるはずよ。みんな、覚悟して!」
ルーシェが気合を込めて号令をかける。
「頑張ってねぇー!」
船の上からロイスが手を振り、震えながらもタローもそれに続いた。
「さて、クライスに連絡しないと」
ロイスは念を集中し、クライスへ無言の通達を飛ばす。
〈私たちは島に上陸した〉
——魔窟、森林地帯——
「おそらく魔王がいるのは洞窟だ。まずはそこを見つける」
コロウが指示を出す。
「洞窟?」
ルーシェが疑問を口にする。
「奴はエルフを島に連れ帰っては食らっている。逃げられないようにどこかに幽閉しているはずだ」
コロウの言葉に緊張が走る。
——魔窟、洞窟——
「オラ来いよ!化け物が!」
クライスが洞窟の外で叫び、仲間たちを逃がした。
洞窟の奥では、魔王とクライスの激しい戦いが繰り広げられていた。
「クライス!」
ルーシェたちは洞窟にたどり着き、戦う彼の姿を見つけた。
「あいつが魔王か!」
コロウの視線の先に、太く図太い胴体に四本の細い脚、六本の腕を持つ異形の化け物が鎮座している。
「みな、突撃!」
ルーシェの声でボルケーノ王国兵士たちが一斉に走り出した。
「コロウは私とクライスの援護をお願い」
ルーシェはコロウの肩に手を置き、駆け出す。
「任せろ」
コロウは背負っていたライフルを構えた。
「はぁっ!」
ルーシェは剣を抜き、魔王に飛びかかる。
「ぎゃあああああ!」
魔王の背中にザクザクと剣が突き刺さる。
「爆発魔法!」
クライスの掌から光の弾丸が飛び出し、魔王に直撃。大爆発が洞窟内を揺らした。
「ぐぐう!」
魔王は激痛に喘ぎながら、拳を振りかざす。
「ルーシェ!」
クライスの叫びに間に合わず、拳がルーシェの横腹に直撃した。
「グッ!!」
ルーシェは吹き飛ばされ、洞窟の奥へと倒れ込む。
「ルーシェ!くそっ!」
コロウは銃を乱射するが、魔王には傷一つ付けられない。
「なんて頑丈さだ、このデカブツは……」
クライスが嘆息する。
その時、洞窟の奥から巨大な光線が放たれ、魔王を直撃した。
「光魔砲」
バシューン!と轟音と共に魔王は洞窟の壁に叩きつけられる。
「魔王の力は、この程度かしら?」
ルーシェは首を鳴らしながら歩み寄った。
「なんてタフな勇者さんだこと」
クライスが感心するように言う。
「褒め言葉?」
ルーシェは微笑んだ。
「いいや、羨ましいだけだよ」
クライスは冗談めかして返す。
「油断すんな!まだ生きてる!」
後方からコロウの声が響く。
魔王がむくっと起き上がり、再び襲いかかろうとしていた。
「来るぞぉ!」