兵士たちが構え、一斉に射撃を浴びせる。
「構え!撃て!」
バシューン、バシューン、と矢が魔王に降り注ぐ。
「ボケカスがてめえはぁ!」
クライスが叫び、飛び掛かるが魔王はびくともしない。
「なんで傷一つつかねえんだ……」
クライスが首をかしげる。
「光魔法」
ルーシェが剣に魔力を込め、白い光が剣を包む。
「剣に魔力を込めるのか……やってみるか」
クライスが火炎魔法を剣に纏わせる。
「これで焼き殺してやる、ぶっ殺す」
ニヤリと微笑みながら魔王に斬りかかる。
「いくよ、クライス」
ルーシェが声をかけ、二人の魔法が魔王に迫る。
「ぐるるるぅ……」
魔王はうなり声を上げ、周囲を見渡す。
連れ去ったエルフたちがいないことに気づき、魔王は洞窟の外へと走り出した。
嵐の中、逃げ走るエルフたちは海浜へ辿り着く。
「やっと助かった……」
喜びもつかの間、魔王が猛スピードで追いかけてきた。
「きゃあああああ!」
エルフたちが悲鳴を上げ、次々に魔王に飲み込まれていく。
「おい、やめろ!」
クライスとルーシェが駆けつけるも、魔王はすでに捕らえたエルフたちを食らい尽くしていた。
「はぁあ!」
ルーシェの剣が光に包まれ、魔王へ振るわれる。
大きな切り傷が魔王に刻まれ、緑色の血が滴り落ちた。
「うぎゃああああ!!!」
魔王は苦悶の声を上げる。
「おらああ!」
クライスも斬撃を浴びせ、魔王はその場に倒れた。
「や、やったか……!?」
クライスが息を呑む。
だが魔王の身体は石のように硬直し、灰色に変色していく。
「まだよ」
ルーシェは冷静だった。
パキパキと魔王の体にひびが入り、小さな人型の物体が這い出てきた。
それは白く痩せ細った姿に赤い目、鋭い牙を剥き出しにして笑った。
巨大だった魔王は、ルーシェたちと同じ背丈のエルフへと変貌を遂げていた。
「なんだ、魔王からエルフが出てきた!」
クライスが驚く。
「気をつけて!奴はとんでもなく強くなってる」
ルーシェが警告する。
その瞬間、魔王は転移魔法でクライスの目前へと飛んできた。
「ルーシェ!逃げろ!」
クライスが叫ぶ。
だが、魔王の小さな拳がクライスの顔面をえぐった。
どしゅーん!とクライスは殴り飛ばされる。
「まずい……!結界魔法!」
ルーシェが結界を張ろうとしたが、魔王の拳