目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第3話 この世界へ

 質問に対しての答えは「こことは違うけど、結局同じ世界から来た」だった。アヤカが言うにはこの言葉の意味を探そうとしても今の世界では見つけることはきっとできない。とそれだけを私に告げる。


 それと最も大事なことがあるらしく、それは「僕と同じだからキミは」とのことだった。


 何を言っているのか理解は出来なかった。けれど、アヤカは続けた。


「キミにはツバサがある。けれどそれはまだ眠っている。だから僕がここに来た。それがこの世界に来たもう1つの理由」


「ツバサ・・・ねぇ」


 背中にそんなのが生えているわけではない。きっと何かの比喩なのかも。とそう考えたのだけれど何のことなのかは全く分からなかった。


「とりあえず僕の準備が整うまでにはもう少し時間が掛かる。それまでしばらくここに住むことにするよ」


「住むことにする」宣言をされた。


 それからというもの彼は私の座るパソコンデスクの後ろ側に座り込み、本を読みふけっている毎日になったのだけれど。


 見た目的に彼は「生きている」と思う。ということは何かを食べなければいけないのではないかと私は考えた。その証拠に彼には立派な口のようなものが付いているし、歯の形状的に肉食ぽっさが有る。


 けれど彼は何も口にしない。


すると「水はどうすれば手に入るか」と聞かれたのでお風呂に連れて行き、水を出してあげたら水を浴び始めた。それ以来、気が付くと1人でお風呂に向かい、器用に水を出して水を浴びている。


 それ以外の物を取り込む様子は無かった。


 そんなある日、私は買ってきたたこ焼きを食べながら彼の様子を伺っていたのだけれど、やっぱり気になって聞くことにした。


「ねえ、アヤカ。あなた何も食べてないけど、平気なの?」


「・・・・僕?」


「あなたしかいないでしょうが」


 するとアヤカは天井を見上げ私の方を向いて聞いて来た。


「ミカは食べるために生きているのか?それとも生きるために食べているのか?」


「・・・どっちもじゃない?鶏が先か卵が先かみたいなもんでしょ」


「なるほど」


 とまた今度は腕を組んで天井を見上げた。


「僕はキチンと食べているよ。大丈夫だ、安心してくれ」


 今度は私が腕を組んで天井を見上げた。食べている・・・。冷蔵庫の中身は別に減ってないわけで。とすると彼は光合成でもしているのだろうか?聞いてみることに。


「光合成でもしてるの?」


「・・・おしい。近いものはある」


 私の予想は近かったらしい。


 アヤカが先に言っていた「結局同じ世界から来た」ということが本当なら、食べる事で何かを取り込むことも同じなんじゃないかと考えた。現に、アヤカは本を勝手に開いたし、水だって浴びる。


 同じ世界に住んでいたとしても取り込むものは生き物によって違うわけで。草しか食べない草食動物、肉しか食べない肉食動物。人間みたいな雑食。植物は光合成をするし、動物の中には鉱物を食べる奴もいるし。


 水が主食なのだろうか?


 でもまてよ。アヤカは「食べている」と言っていて「飲んでいる」とは言っていない。まあ外から見ると水も飲んでいるというよりも「浴びている」が正しいのかもしれないけれど。


 となると私の知らない何かを食べていることになる。それは一体何なのだろうか。


 しばらく考えた結果、私はある行動に出た。


 アヤカを触ってみたのである。


「何も無いみたい」


 触っている感触はある。けれど温度差も無いし、なんというか実物の感じがしない。


「どしたの急に」


「いやね、触れば何で出来てるのかわかるかなと」


「なるほどね、僕が何を食べているのか知りたいわけだ」


 そう言うとアヤカは時計を見た。


「それは夜になればわかると思うから、見たいなら今晩かな」


「わかった」


 私は夜を待つことにした。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?