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第2話 独白

──あんた、“冒険”って言葉についてどう思う?

そう。“冒険”だ。

魔王を倒す勇者?

ドラゴンに乗った騎士?

迷宮の奥で一攫千金?

世界を救って一発逆転?

……良いねえ、若いってのは。

希望を信じている。現実は変えられる。

そんな目をしていられるんだから。


確かに、あんたの言う通り、“冒険”には夢と欲望が入り交じっている。

だが、夢の裏には、いつだって絶望がある。欲望の行き着く先は、狂気だ。

俺は、絶望に沈んだ奴を数え切れない程見てきた。

勿論、狂気に呑み込まれた連中も。


俺の仕事。

それは、狂気に呑まれた連中を“片付ける”ことだ。

金と引き換えに、そいつらを“無かったこと”にする。

そこには“復讐”も“報い”も無い。

ただ無感情に。ゴミを穴に埋めるように。

死体の数なんて覚えちゃいない。

俺はただ、契約通りにやっているだけなのだから。


そして今日も──“掃除”の、依頼だ。

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