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17.スキルユーザー

『異なるアプリ・スキルを10種類使用あるいは購入したため、

 スキルユーザーの実績が解除されました。

 おめでとうございます。

 つきましては、記念のアプリをお贈りいたします。

 是非、ご活用ください。

[アプリの詳細はこちらをタップ]

 それでは、今後ともよろしくお願いいたします。』


「アプリとスキルが10種類、か……」


 タブレットに届いたメッセージを読みつつ、そんなに買ったり使ったりしただろうかと記憶を呼び覚ます。


 さすがに、メッセージアプリは別だよな?


 となると、順番に《水行師》、《レストアヘルス》、《トランスレーション》、《セキュリティゾーン》、《初級鑑定》、《スキル錬成》、《シャドウサーヴァント》が石を払って買ったやつ。


 この7個に加えて、元々あったりもらったのが《ホームアプリ》、《マナチャージ》、《ホールディングバッグ》か。


 確かに、合計10個。条件は満たしているようだ。


「というか、上手くやったら初期段階で実績解除できてた可能性もあったのか」


 なにをもらえるのかにもよるけど、それでヴェインクラルとの戦闘が楽になった可能性もあったかもしれない。


「今度は、なにを贈ってきたんですかね」

「まあ、あれこれ話すよりも確認したほうが早いな」


 俺の肩へ移ってきたエクスと話ながら、メッセージのリンクをタップ。

 自動的に、アプリが起動してくる。


「《オートマッピング》か……」


 そのロゴに、答えはあった。

 というか、そのまんまだ。


「この図は、家ですね」

「そうだな」


 デフォルトが、現在位置を表示する設定になっているのだろうか。間取り図に家具類が追加された、わりと詳細な俺の部屋の地図が表示されていた。


「要するに、地図アプリってことか」


 まあ、スマフォやタブレットならだいたいあるわな。そういう意味では、珍しくはない。

 そして、戦闘で使えるやつではなかった。


 だが、自分の家をいつまでも見たって仕方ない。

 右上のほうにある「↑」のアイコンをタップすると画面が切り替わり、周辺の地図が表示された。


 スライドするとある程度の範囲も出てくるが、なかなか詳細だ。衛星写真で構成されているかのよう。そりゃそうか。家の中まで表示されるんだし。常識じゃ測れない。


 ……なんだけど、妙に空白地帯が多い。どういうことだ。


「普通の地図アプリより情報が少ないって、使えねえな」

「所詮、実績解除特典ですし、今回は外れだったんでしょうか?」


 そういうこともありえるか。


 ……いや、待てよ。


「《オートマッピング》なんだよな?」

「そうですが……。オーナー、なにか気付いたんですか?」


 エクスには答えず、俺は地図を確認していく。


 これは、やっぱり……。


 さらに「↑」のアイコンをタップして広域図を表示させ、推測は確信に変わった。


 本来なら日本列島が表示されるはずだが、そこは虫喰いだらけ。というか、海すらきちんと表示されていない。


 欠陥地図にもほどがあるが、理由が分かれば納得。


「これ、俺が今までに行ったことがある場所だけ登録されてるんだ」


 今度は「↓」アイコンを連打して最寄り駅の周辺を表示させると、駅のホームまでしっかり表示された。


 しかし、行ったことのない駅の反対側は真っ白。白地図ではない。空白地帯だ。


「なるほど……って。これ、ほとんど駅と家の間しかマッピングされていませんよ?」

「地元だって、生活圏外だとそんなもんだよ」


 というか、まともな時間に帰ってこないし。

 休日があっても寝てるし。

 寝てないときは、天井の染みを数えたりしてたし。


 とか言うと、エクスが哀しそうにするので言わないけど……。


「ん……?」


 そのまま駅周辺を表示させていたら、●と▼を上下に重ね合わせたアイコンが出現した。


「なんですかね?」

「さあ?」


 試しにタップしてみたが、UNKNOWNと表示されるだけだ。文字通り、よく分からない。

 そのまま観察していたが、電車に乗ったのだろうか。駅とアイコンが重なり、しばらくしたら消えてしまった。


「そういえば、異世界で行った場所はどうなるんだろうか?」

「オルトヘイム側で、ですか……。なるほど。だとしたら、むしろ、そちらがメインになりそうな……」


 だよね?


 タブレットの画面を隅から隅まで見て見ると、左下。倍率切り替えの「↑」と「↓」のボタンの反対側に、「⇔」というボタンがあった。


 分かりやすいな。


「あっ、地図がまた切り替わりましたね」


 俺が「⇔」のボタンをタップした途端、どこかの建物の内部が表示された。

 どこかというか、あの洞窟の中。魔力水晶がたくさんあった部屋のところだ。


「異世界側も、問題なく表示されるな……」


 しかも、さっきの●と▼を上下に重ね合わせたアイコンもある。迷わずタップすると、「Kaira」と表示された。


「そりゃ、カイラさんか。そうだよな。他の人だったら、びっくりだよな」

「でしたら、さっきのUNKNOWN表示はなんなのでしょう?」

「分からねえな……」


 別に、知り合いだから出るってわけでもなさそうだし……。


「これ、俺基準なのが惜しいよな……」


 カイラさんと共有できたら、オーガの侵攻ルートまで確認できたのに。石を追加で、共有とかできないものだろうか。


「ふあぁあぁ……」


 そんなことを考えていると、思わずあくびが出てきてしまった。


「オーナー、眠いのなら寝ましょう。お薬に頼らず寝るチャンスは逃さず」

「……そうだな。でも、《シャドウサーヴァント》ってのは、出しておこうか」


 エクスだけでも出せるんだろうけど、俺も見ておきたいしな。


「では、《シャドウサーヴァント》を実行しますね」


 エクスの言葉が終わると同時に、タブレットの液晶画面から黒い靄のようなものが出現した。

 それはしばらくすると人の形を取った。


 そう、形だけ。


 ミステリーマンガの犯人みたいな、真っ黒な男だ。いや、性別不詳だな。

 クトゥルフものに出てきたら、正体は確実にナイアルラトホテプ。


「見るからに怪しい……」

「これはちょっと、街中を連れて歩けませんね……」

「ダンジョンみたいなところだったら、問題ないのかもしれないけどな」


 あるいは、コートを着せて帽子をかぶらせて……。


 妖怪人間かな?


「とりあえず、エクスはお風呂へ行ってきますね。エクス……そこの板を持って、向こうへ運んでください」


 命令に従い、《シャドウサーヴァント》がタブレットを持って風呂場へと消えていった。


 ……家の中にいても、かなり怪しいなこいつ。


「なにかあったら起こしてくれよ」


 と言って、俺も寝室へ移動する。大地震が来たら、本に潰されて死にそうな愛しの我が城だ。


 なんとか着替えてからベッドへ倒れ込み、まぶたを閉じた。


 そういや、俺は寝るけどエクスの充電ってどうなってるんだろ……。


 帰ってきたときに習慣でしたけど、もっと必要なんじゃないだろうか。モバイルバッテリーも買い足しておけば良かった。


 そこで、意識は途切れた。


 そして、数時間後。


「オーナー、おはようございます! こちらの準備は万端整いました」

「お、おう」


 真っ黒な男に抱えられたタブレット……から浮いているエクスが、さわやかな笑顔を振りまいている。


 背景とのギャップがひでえ……。


 エクスが自立移動できるアプリとか欲しくなるけど、コスパで《シャドウサーヴァント》を選びそうだなぁ。


 というか、夕方に再び目が覚めた俺が最初に見た光景がこれって。


 最悪すぎて、ここからは登っていくしかないぜ。


「頑張るか!」

「いいですね! 空元気も元気って言いますからね!」

「みんなで幸せになろうよ」


 ファイター呪文を唱えてから、俺はベッドから出る。謎のテンションだ。


 身支度を調えつつ、エクスに確認。


「任せきりで悪かったな。準備万端ってことだけど、問題はなかった?」

「はい。全部に水を詰め終わりました。」

「パーフェクトだ、エクス」

「感謝の極み」


 ズバァっとお辞儀をするエクスを眺めつつスーツに着替えた俺は、タブレットに買ってきたストラップを装着する。


 ストラップといっても、観光地とかで売ってるような飾りじゃない。

 背面にバンドのようにつけて、片手で保持できるようにするやつだ。


「……うん。悪くないな」

「より一層オーナーと密着する感触がして、いいですね」

「他意はないんだよな?」

「それでは、《ホームアプリ》を実行します!」

「そこスルーかよっ」


 エクスのことは信頼してるけど、たまに心配になるというかなんというか……。


 とりあえず、これで残りの石は1万403個か。

 まあ、まだまだ黒字だから大丈夫、大丈夫。一休み一休み。


 と、いう間に俺の部屋は消え失せ、洞窟を掘り抜いたニンジャ……影人シャドウの月影の里へと転移した。


「ミナギくん……? え?」

「久しぶり……じゃないけど、戻ってきました」


 そして、ニンジャとは思えないほど、びっくりした顔のカイラさんがいた。

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