檜山氏が去ってから。
私は普通に暮らしているが、クラレンド達のことは連日ニュースでやっている。そして、勇者センを探していること、勇者戦の特徴も報道され出した。黒髪黒髪、小柄で童顔、ナグリに詳しい。まあ、私がぼかしつつも言ってたことだな。
今のクラレンド達もテレビに写し出された。あ、クラレンド、髪伸ばしてる。髪の伸び具合からして、私がこっちに戻ってから、あっちでは最低1年は経ってるのか?
サマセットの人々は、北欧人並の背の高さと彫りの深さを持つ。だけど、肌の色は本当にさまざま。
そして、サマセットの人々は肌と髪と目のコントラストを愛する。クラレンドの、褐色の肌・赤目・銀髪は、とんでもない美形なのだ。
ちなみに、ティースタの黒髪碧眼、フィーユの栗毛にスミレ色の目、サーボの赤毛緑眼はサマセットでは十人並みである。私からは、割と整った顔に見えるんだけどな。
あと何故か、魔国の、魔人を名乗ってた彼もいた。スラッとした出で立ちで、黒髪をきっちり撫でつけているが、金色の瞳は猛禽類のよう。この人、頭回るんだよな……。
私は、アップで映し出されたクラレンドをじっと見た。
……クラレンド。あなたの銀髪はきれいなんだから、後ろでひとつに括っちゃってるのもったいないよ。あ、布で胸押さえるのもやめたんだ。爆乳だねえ。体のライン全体も女らしくなってる、ナグリ薬を飲まなくなったのかな?
うん、見た目はマッチョな女性、で通るんじゃないかな。まあ、声・ヒゲ・喉仏の問題はまだあるだろうけど。
みんな元気そうで、よかった。
……さて。
私は、こっちでも自分に魔力がある可能性を検討しよう。クラレンドたちが来て、魔力の活用法が日本に入ってきた以上、私はこの世界の魔力持ちとして彼らに接触する機会もあるかもしれない。
体の一部には魔力の残滓が宿る。私は髪の毛を1本抜いた。
髪の毛1本1cm……いや、1mmにしとこう。
風呂場に水をためて、コンビニで買い込んだ氷と冷蔵庫で作りまくった氷をドバドバ入れる。よくかき混ぜて水の温度を下げ、さらに氷を入れて、氷が少し溶け残った状態にする。これを200Lで0℃の水としよう。
覚えていた簡単な術式、魔力を熱に変換するものを書く。術式と術式の配置を工夫して、大容量の水を同時に温められるようにしておく。
そして、髪の毛1mmを術式に触れさせ、できるだけ遠くから術式の最後の一筆を書き加え、作動させた。
ボン! と音がして、氷風呂はグツグツ煮えたぎる熱湯になった。
200Lを1秒で0℃から100℃に。計算したらkWhで言えば23ちょい。もっと分かりやすく言うと、髪の毛5.5mmで私の一月の電力を賄えるレベル。……半端ないな。
魔力の残滓でこれなので、私の体に収まってる魔力、つまりエネルギーはもっと……。
まあ、使わないことを祈ろう。でも、何に使えるかどうかは把握しておこう。
あと、これからはもっと髪を伸ばして、抜けた髪の毛を取っておこう。爪もだ。