修論の内容を知ってる人の心当たりは全部クラレンドたちに話した。だから、クラレンド達ともう会うことはあるまい。
と思ってピペット土方生活をしていたら、また檜山氏から連絡があった。
「あなたが働いている会社からの出向という形にしますので、サマセットの国賓達に着いて、日本のことを教える役をしていただけないでしょうか?」
は?
「そ、そういうのに適任の人は、ほかにもっとたくさんいませんか?」
「クラレンド・シンブリー氏があなたをご希望です」
嘘やろ!?
「どういう理由ででしょうか?」
「シンブリー氏を奇異の目で見なかったことと、魔力による義足にがっつかないで他の人を優先する発言をしたことですね」
そこかよ! 確かに私は事情を知りまくってるしな! でも、義足については、普通にあれが本音だったしな……。
「やるとして、どういうことをすればいいのでしょうか?」
「基本は付き人ですね、日本での暮らしの」
そんな事言われても、何をどうしろと。
「すみません、これまで経験がないので、何をすればいいかまったく見当がつかないのですが」
「私も付きますので、安心してください。それと、国から予算がつきますので、高給をお約束します」
提示されたのは、今の給料の3倍。腰が抜けるかと思った。
檜山氏はさらに連絡をよこした。
「出向ですので、シンブリー氏一行に付き人が必要なくなっても、今の仕事に戻れます。何も心配はありませんよ」
これ、断ったらその方が不自然だよな……。
「お引き受けします」
これから、一体どうなっちゃうんだ……。