俺たちは別にニホンに移住したわけじゃなくて、毎日転移門で異世界と行き来してる。基本、日中ニホンに行って、夜はサマセットに戻ってる。そんで、首都ロヒニのお偉方に連絡と報告してから、郊外にしつらえた家で寝る生活だ。
ティースタの研究所を兼ねた、仲間たちが集まる用の家。1年前までは、センの兄貴もいた。
ニホンに行って、クラレンドは小鹿野千春さんをずいぶん気に入ったみたいだ。
「なあ、クラレンド。千春って子の、どこがそんなにいいんだ?」
12、3の女の子にしか見えない。まあ、手堅く働いてるみたいだし、乳はでかいし、成人なんだろうけど。確かに落ち着いて控えめだけど、あんなちっちゃい女の子をそんなに買うのか?
クラレンドは微笑した。
「控えめながら、こちらを慮ってくれて、言うべきことはきちんと言ってくれるところがありがたい」
「ふーん。あんなちっちゃい女の子なのに、よくあんなに落ち着いて話すよな」
フィーユがなにか言いたげな顔をして、ティースタも「あの、サーボ」と言った。
「小鹿野千春さん、35歳だってよ」
「は!?」
35歳!? 中年!?
クラレンドが言った。
「我々よりよほど年上なのだ、彼女は」
俺が今年で21。クラレンドとティースタは26。フィーユ姉は28。ええ!? 俺等の最年長よりも年上!?
フィーユがわくわくした顔で言った。
「あっちの女の人は、結婚しないで仕事し続けられるんでしょう?私、千春さんがどんな風に暮らしてるのか聞きたい!」
ティースタが微妙な顔をする。多分ティースタはフィーユ姉が好きなんだけど、フィーユ姉がずっとこれだからまったく伝えられてないんだよな、かわいそうに。
クラレンドも、大好きなセン兄貴にちゃんと会えたらいいのに。でも、セン兄貴が名乗り出てくれないってことは、名乗り出られない状態、つまり墓の下とか……。
俺は、ブンブンと頭を振って嫌な考えを追い出した。クラレンドが不思議そうに俺を見た。
「どうした?」
「……なんでもない」
俺は、虚勢を張るように声を張った。
「あー、早くセンの兄貴に会いたいな!」