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檜山城の視点

 私はそれなりにオタクである。主流の漫画およびアニメはそれなりに履修している。

 勇者センは日本人で……間違いなく、攻殻機動隊、シン・ゴジラ、エヴァンゲリオン(旧劇)を履修している。

 クラレンド一行から勇者センがしたことを一通り聞いた。砂で作った義体(アバター)の遠隔操作を提案したこと。自身は砂で作った怪獣で魔国軍の施設を踏み荒らしたこと。魔国将軍ムルーターの側近、おそらくは日本からの転生者を懐柔し、サマセットへ誘い、自分より先に日本へ戻したこと。

 義体は義肢の全身版。攻殻機動隊の作者士郎正宗が提唱した概念である。そして、砂で作った怪獣の絵を見せてもらったが、どう見てもゴジラ、それもシン・ゴジラ版だった。

また、勇者センは、転生者を懐柔する時、怪獣を動かして魔国軍に近づいて、両手を広げ、あちらに転移していたパソコンから日本語歌を大音量で流したそうだ。すると、側近は魔法を使って怪獣の腕に飛び込んでいったという。

 クラレンド氏からその歌のサビのメロディを聞いて、察しが付いた。『魂のルフラン』だ! 私の腕に還れ、生まれ育った土地へ帰れ、これほど帰りたい転生者を惹きつける歌詞もない! ムルーターの側近は、日本に帰りたかったのだ!

 ……勇者セン氏が履修していた作品は分かった。日本人のオタクなのもよくよく理解した。

 しかしどれも有名作品だ! 今はいくらでも昔の有名作品にアクセスできる、彼の年代は絞り込めない!

 ただ、見落としていたことがひとつある。

 義体の草薙素子少佐も、魂のルフランの作者及川眠子も、歌う高橋洋子も、男ではなく女だということだ。

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