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第2話

そしてすぐに俺は思い出した。遊戯神のイタズラで俺がプレイしていたMMOそっくりの異世界に連れてこられたことに。


記憶を弄られたらしく神様の顔は思い出せないが、やたらと耳につく甲高い声が脳にこびりついている。それによると毎日ゲームをするしかやることがなく暇そうにしていた俺を見ていた遊戯神様は、そのゲームそっくりの世界を作り特殊スキルを与えた俺を放り込み観察する遊びを思いついた、と言っていた。


神様は俺が放つ退屈と絶望の気に惹かれてやってきたらしく、お主の退屈、ワシがなんとかしてしんぜよう、とも言っていた。


意外といい神様なのかもしれない。



そうして与えられたスキルが完全気配遮断(パーフェクト・ハイディング)だった。どうやら先ほど夜道を散歩中に妄想していた「透明人間になれたら楽なのになあ」、という俺の願望を叶えてくれたようだ。


そしておまけに言語理解と鑑定スキルもつけてくれていた。ステータス表示やアイテムインベントリなどのゲームシステム的なものもあるが、ログアウトはできない。ここはあくまでリアル世界、というわけだ。


だがそれ以外、一切の記憶がない。初期リスポーン地点と言ってもいいのか、今いる自分の場所もよくわからない。


以上3つのスキルとゲーム知識、そして散歩時の衣服が俺のもつ全て。これだけでこの世界を生き抜いてみろ、ということか。


いいだろう、丁度人生に飽きていたところだ。その遊び乗ってやろうじゃないか。唯一の趣味だったMMOの世界に入り込むなんて、むしろVRMMOができて最高、と思うことにしよう。


「で、ここはどこなんだ?」


神様から確かに聞いたので、ここはMMO【アルカナ・オンライン】そっくりの世界ということで間違いないはず。そして神様はここで死ねば本当に死ぬと言っていた。じゃないと、お前の退屈という名の絶望を埋めることはできないだろう? とも。


「○××!! ×○▽■……っ!!!」


不意に肩をどつかれた。明らかに凶悪そうな面したチンピラやろうがナイフ片手にドスの利いた声で何か言っている。カツアゲ、強盗の類か。言葉がわからん。


とりあえず俺はぎこちない笑顔を浮かべつつ、両手を上げて無抵抗のポーズ。

神様の言うことが本当であれば、ここで死んだら俺の人生ジ・エンドとなるはず。人生特にやり残したことはないが、死んでやる義理はない。


何より痛いのは嫌だ。俺は健康診断の採血が怖すぎて、ベッドに寝て目を瞑っている間に血を抜いてもらうほどのチキンなのだ。ナイフで刺されるなどまっぴらごめんだ。


(で、スキルはどうやって使うのか)


神様から一通り説明は受けたのを思い出しながら、俺は心の中でステータスウィンドウオープンと唱えタッチパネルのようなウィンドウを開く。どうやらチンピラには見えてないらしく、特に攻撃してくる様子はない。


続けてスキルウィンドウを開き、完全気配遮断を素早くタッチしアクティベート。


その瞬間、チンピラは呆けたような表情になり、辺りをきょろきょろ。俺を見失って探しているようだ。凄いぞこのスキル。目の前でいきなり敵が認識できなくなるのか。


俺は素早くその場を立ち去ることにした。


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