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第4話

 裏路地に入った俺は、すぐに完全気配遮断をアクティベートする。言語理解もアクティベートしターゲットを探した。


 ターゲットは、犯罪者だった。


 そう。俺は単純に犯罪者の金品をかっぱらうことにしたのだ。それなら良心が痛むこともないだろう。


 そして今まさに、さきほどの凶悪面の犯罪者がメガネの青年にナイフを突きつけて金品を要求していた。犯罪者の語気が強いので間違いないだろう。


 俺は完全気配遮断状態のまま犯罪者の男に近づくと、腰のポシェットからコイン袋を抜き取り、ついでに手に握っていたナイフと鞘を奪って逃げた。


 軽く後ろをみると、青年が俺と逆方向に逃げており、犯罪者はその場で手を振り回して憤慨していた。青年、ちゃんと逃げてくれよー。



 さきほどの通りに戻った俺は、完全気配遮断をアクティベートしたままコイン袋を確認すると小銀貨2枚大銅貨2枚小銅貨10枚が入っていた。鞘にしまったナイフを鑑定してみると、【青銅のナイフ】とのことだった。


 とりあえず目立たない服が必要だ。この服じゃ目立ちすぎる。またいつあの凶悪面の犯罪者に見つかり、襲われるかもわからない。


 警備兵の見える場所で、完全気配遮断を解除。座り込みSPを回復させた後、屋台で肉串焼き2本を小銅貨2枚で買って食べたが死ぬほど美味く感じた。ずいぶんと腹が減っていたらしい。



 さて、町をうろついて情報収集でもするか。


 適当にぶらぶらしていると、丁度良さそうなフードつきマントを軒先に吊るしている古着屋があったので、そのマントを大銅貨3枚で購入することにした。


 元々着ていたコートはこの世界では目立つような気がするので、おそらくもう着ないだろう。店主に「買わないか?」と聞いたところ、小銀貨2枚で売れた。手持ちは小銀貨3枚大銅貨9枚小銅貨8枚と若干増えた。


 道行く人を見るとわりとフードをして歩いてる人も多く、フードをしていればこちらでは逆に目立つ黒髪と平べったい顔も隠せる。良き買い物だったな。


 さて、情報収集をしないといけないがどうするか。俺はまだこの町の名前すら知らない。


 言語理解スキルがあるとはいえ、陰キャの俺には異世界人にフランクに話しかけれるほどのコミュ力はない。買い物するくらいなら何とかなるが、陽気なアメリカ人みたいに「ヘイ、マイケル!」と話しかけるのは絶対無理。


 どうしよう……、と思っていたら閃いた。

 完全気配遮断があるじゃないか、と。


 さっそく俺は、聞き込みを開始することにした。


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