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第43話

「くーん、くーん……」


 朝起きるとマメが俺のベッドの脇で前足で俺の腕を引っ搔きながら、物悲しい鳴き声を出していた。「お腹すいたよ~、早く起きてよ~」と言っているのが丸わかりの鳴き方だ。


 なんだか俺まで悲しくなってきた……。ごめんね今パパ起きるからね……。


 ……そういえばこのまま友好値がゼロになるとペットが逃げてしまうんだったっけ。焦った俺は、急いでエサのカリカリと水をやり、ナデナデして友好値を上げる。


 ふー危ないとこだったな。



 ……さて、今日はオーク村の討伐隊に参加する日だ。早めに兵舎に向かおう。


 マメは一緒に連れていく。ペットモンスターを進化させるにはレベル上げが必要だし、いざとなったら完全気配遮断を発動すればマメも一緒に隠れることができる。



 兵舎に向かうと、隊長格のアーノルドさんという人をリーダーに30名ほどのローエン兵士団の討伐隊が編成されていた。いつもはルベン議長邸の警備をしているイワンさん、ミランダさんも部隊に編制されていた。


「昨晩我々の斥候が森の中に80体クラスのオーク村を発見した。我々はこれからそれを殲滅する! では、出陣……!!!」


 鉄の軍馬に跨り剣を掲げたアーノルド隊長の号令で西門から討伐隊が出陣した。俺はそれについていく格好だ。



 俺たちは斥候の案内で息をひそめてオーク村に近づいた。4方向からの包囲殲滅作戦だ。俺は昨日完成させたミスリルの防具(劣化品)とツルハシ(劣化品)という装備だ。


 最初はミスリル防具にツルハシ? と珍しがられたものの、今は大規模な戦闘を控えているので、そのうち誰も気にしなくなった。



 ……そして一団は、オークが集団で生活している村に到着した。



 アーノルド隊長の合図で火矢が射かけられた後、俺たちはオーク村に突撃した。


 俺は完全気配遮断を発動。スキルの特性上、ピンチに陥っている味方の支援にまわる方が有利に戦いを進められるだろう。


 上がる火の手に慌てるオークたち。敵の集団はざっと見たところ、オークが60体、オークジェネラルが20体といった構成だった。


 打ち合わせ通り俺たちは、孤立したオークからを二人一組で撃破していく。俺はピンチの仲間を狙うオークを見つけては背後に回りスキル【マイニング】で頭を攻撃していった。俺の一撃を食らったオークは、頭から血を流し倒れていった。


 ……よし、普通のオークであればこれで倒せるな。


 だがオークジェネラルはこの技では倒せないことはわかっている。ここは例の技の出番だ。



 ――メルトダウン発動。Dランクインゴット精錬。



 オークジェネラルに勝てるのはアーノルド隊長、ミランダさん、イワンさん含め5人しかいないとのことだった。


 なので俺は率先してオークジェネラルの頭部を狙って一昨日編み出した例の技を仕掛けて倒していった。



 戦闘は時間の経過とともにこちらの有利に進んでいるかに思われた。だがそんなとき、アクシデントが発生。



「グガアアアアアアアア!!!!!」



 大音量の咆哮と強大なプレッシャーが辺り一帯を支配する。


「あれは、オークキング……!! 全員下がれっ!!!」


 アーノルド隊長が驚愕の声を上げる。俺は距離を取りつつすかさず鑑定を発動。



【オークキング:オークの王、オークジェネラルのさらなる上位個体。Cランクモンスター。属性:地】



 オークキングの咆哮で落ち着きを取り戻した20体ほどのオークとオークジェネラルがオークキングに率いられ俺たちと対峙する。


 俺は一旦完全気配遮断を解きSP回復に努める。



「全員よく聞け!! ミランダは兵を率いてオークとオークジェネラルを押さえろ。ミランダ以外の精鋭3名は俺とともにオークキングの首をとる!! ハイド殿は……、ミランダと共にオークジェネラルを担当してくれ!! では総員攻撃開始!!」

「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」



 戦場に双方の怒号と悲鳴が鳴り響く。


 俺はギリギリまで座ってMP回復をし、敵が接敵した瞬間を見計らい再び完全気配遮断を発動した。


 その瞬間、俺の脳裏にまたあの閃きが走る。


 場を支配しているものの正体は何だ? 戦場を俯瞰しろ……、頭を冴えわたらせろ……。


 俺は戦場を上空から将棋盤を見るかのように俯瞰して考える。鼻血が出るほど脳をフル回転させる。


「……わかった」


 俺はミランダさんらのサポートには回らず、オークキングの方を向く。答えは明確だった。



「グガアアアアアアア!!!!」


「ガハッ……!」


 オークキングの太い腕が繰り出す戦斧もろに食らい防御していた盾ごと吹き飛ばされるアーノルド隊長。


 他のイワンさん含む精鋭三人もオークキングを取り囲み隙を狙うも、手をこまねいている。アーノルド隊長は倒れたまま動かない。


 俺はその隙にそっとオークキングの後ろに近づき、足場にするための適当な土石を出して上り……。



 ――メルトダウン発動。Cランクインゴット精錬。



 その瞬間オークキングの頭部が灼熱の炎に包まれ、俺は【ミスリルのハンマー(劣化品)】を振り下ろした。



 カンカンカン、ジュワー。と間の抜けたエフェクト音が鳴り響く。



「グガアアアアアアア……!!!!!」



 もだえ苦しみ暴れまわるオークキング。周囲の人もモンスターも戸惑ってその様子を見ている。



 そしてやがて静かになった後には、頭にインゴットを生やしたオークキングが胸をかきむしるような恰好で立ったまま死んでいたのだった……。

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