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第44話

「アーノルド隊長、大丈夫ですか……!?」


「ぐう……、やっちまった……。それより、残った敵の討伐をたのむ!」


「……承知しました!!」



 そう言ったイワンさんら精鋭の兵士たちは残った敵を倒すため、ミランダさんの加勢に向かった。


 アーノルド隊長がオークキングの一撃を受けかなりの傷を負っているようだった。蹲って苦しそうにしている。


 オークキングを倒したおかげかレベルアップのファンファーレ音が鳴ったけど、それどころじゃない。俺が何とかしなければ。


「アーノルド隊長! 俺、ポーション余ってますんでどうぞ! あと治療もさせてください……!」


 完全気配遮断を解除した俺は、インベントリからもってきたポーション取り出しアーノルド隊長に飲ませつつ、傷口にツバを吐きかけるという一見妙な行動を取りつつ、スキル【民間療法】を連打した。


 すると時間はかかるものの次第に傷口が塞がっていき、酷い出血が治まる程度まで回復した。


 俺が治療をしている間にミランダさん、イワンさんたちが残りのオークの討伐を完了してくれていた。


「お前たち、よくやった!! 怪我人は……、相当数いるな。だが死んだものはいない! 俺たちの勝利だ!!!」


「「「うおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」



 軍馬に乗って拳を突き上げるアーノルド隊長に呼応し、ローエン兵士団は勝鬨を上げたのだった。


「ん……あれ?」

 それを尻目にオークキングをよく見ると、胸元が赤く光っている。これはまさか……。



【オークキングカード(正位置):HP最大値200%UP。付術効果[聖鎧]と同時に装備時、物理ダメージ50%反射。鎧カード】



 それは1000分の1の確率でドロップするCランクモンスターのレアカードだった。[聖鎧]は付術師のスキル「付術」で装備につけられる効果で、説明書きによるとカードとのセット効果があるようだ。


 カードを拾ってアーノルド隊長に報告すると、「ドロップは倒した者に権利がある。お前のものだ」とのこと。それとは別に討伐報酬も小金貨2枚出るそうだ。


 このカードはありがたくもらっておこう。



 ……



 町への帰り道、一旦隊を離れた俺はこの間オリビアさんと岩盤掘削デートをしたときに持ちきれなかった鉱石類を回収。そろそろミスリルも尽きたことだし、またここで掘らなくちゃ。俺はついでに先ほど上がった分のステ振りも済ませる。


Name:Hide(BaseLv14)

Job:blacksmith(JobLv10)

HP:64

MP:84

Status:S(筋力)22+3、V(持久力)8+2、A(素早さ)3、D(器用さ)5+4、I(知能)19、L(運)2+3(Rest0)

Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv4、防具製作Lv4、メルトダウン、装備修理(Rest0)

鍛冶熟練度:FランクLv6、EランクLv5、DランクLv3、CランクLv2

pet monster:マメLv5/5(ポメラニアン・ウルフ)

所持金:48176arc


 今回はちょっと考えがあってV(持久力)に3ポイントを全て振りHPの最大値を増やした。【オークキングカード(正位置)】の効果を見て思い出したことがあったのだ。


 思いついた作戦はHPが多くないと実行できないので、どうしてもV(持久力)にステ振りする必要がある。


 あとはマメがレベル5になった。Eランクに進化するには最大値の5レベル必要だが満たしてしまった。Fランクのマメは最弱モンスターなので今回のようなCランクの強敵を倒したことで一気に上がったのだろう。


 すぐにでも進化させたいところだが、Fランクの正位置カードを20枚集めないといけないので今すぐには無理だ。


 ミスリルの製作を頑張ったこと、ペットモンスターに手を出したことでずいぶんお金が減ってしまった。ペット進化や装備とこれからもお金が必要となるので、またコツコツ貯めていこう。



 ……



 その後町に戻った俺たちは、全員で酒場を借り切って祝杯を挙げることになった。


「ハイド、お前は見どころがある! 是非うちの兵士団に入らないか?」

「いや、俺はあの……、一人で活動するのが性に合ってますんで。すみません……」

 アーノルド隊長がエールジョッキを片手に俺の肩に手を回し絡んできた。


「いや~惜しいな、実に惜しい!! ヤツを倒したのがお前だとは未だに信じられん!! うちの娘をやっても……、いやイカン、うちの娘だけは誰にもやらんぞ~~~~」

 なんか泣き出した。アーノルド隊長は泣き上戸らしい。


「あーあ、またやってるよ。娘さんのこととなると、いつもこうなんだから。ハイドさん、気にしないでやってください」

 ええもちろんです、と返事をする俺。アーノルド隊長には娘さんがいるらしい。


「あ、そういえばイワンさん。怪我の具合はどうですか?」

「いや、ハイドさんのおかげでほら、すっかりこの通りだ。ありがとな!」

「うちの彼が世話になったよ。私からも御礼を言わせてくんな!」

 軽い怪我をしたイワンさんにも【民間療法】で先ほど現場で治療を施していた。そしてイワンさんとお付き合いをしているミランダさんからも御礼を言われた。


 精鋭兵のカップルかあ。なんか格好いいな。


 酒場にはピアノとアコースティックギターが置いてあった。自由に使っていいらしい。

 俺は大学時代軽音楽部にいたし、家では傍らには大学時代に本当に御茶ノ水で19万で買ったビンテージもののリッケンバッカーを置き、適当に弾き語りできるくらいには練習してた。


 試しに何か引いてみようかと、ポロロンと試奏とチューニング。こういう酒場ならあれがいいか。


 俺はFly Me to the Moon、あと他に何曲かジャズナンバーをアコギで弾き語りした。


 「あんちゃんいいね~」と指笛や拍手喝采。拙くて申し訳ないという気持ちになりながらも、イワンさんやミランダさんたちも楽しんでくれたみたいで良かった。


 泣き上戸なアーノルド隊長は俺の曲に感化されたのか「誰も死ななくでよがっだ~~」と泣き上戸がさらに酷くなっている。隊長は情に厚い人なんだろう。


 ミランダさんに「ほら、こんなところで一人でいないであんたも付き合いな!」と勧められるまま、普段飲まない自分もこういうときばかしは酔ってもいいかと、ちょっとだけエールを飲んでみることに。こちらの世界では18歳は飲酒OKみたいだ。



「なんかこういうの、いいな……」



 一緒に死線を潜り抜けた仲間たちとの、歌って飲んでのどんちゃん騒ぎの夜。仲間の輪から外れさせてもくれない、あったかい人たち。


 勝利の美酒は酷い苦さで、酔いしれるというのとは程遠かったけど。


 だけど何故だか俺は、そのちょっとだけ生ぬるいエールを嫌いじゃないなと思った。

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