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第54話

「さて、今日もコツコツ頑張りますか!」


 俺は鉱石採取の岩盤堀りに出かけることにした。


 色々あったけど、俺はこの世界でも何かを成し遂げたいという気持ちは最後までなくならなかった。


 人との関わりには消極的な自分だけど、自分の目標みたいなものに向かって努力するのが好きなのだろう。そして俺の目指しているところは一朝一夕で届くような類のものじゃないく、見たことのない新たな景色を見てみたいという途方もない願望。


 それは日々の積み重ね以外では手に入らないものなのだから。




 心機一転宿を出てしばらく歩くと、兵士団隊長のアーノルドさんに出くわした。


「よう、坊主。お前さんも朝から仕事か精が出るな。そういやお前さん、俺たちの朝稽古に付き合わないか? もし時間があるなら今からでも」


「え!? 俺が兵士団の朝稽古ですか……?」


「ああ。俺はお前さんの腕を見込んでるんだ。お前さんの得意武器はツルハシだろうが、剣は何にでも応用が利く。使えて損はないはずだ」


 うん、確かにアーノルドさんの言う通りだ。剣は最もポピュラーで汎用性のある武器。剣技を習得できるのは正直ありがたい。


「はい! 是非朝稽古、よろしくお願いします!」


 俺はその申し出を受けることにした。というかこれ、普通に戦士(ファイター)のジョブクエストだろうね。



 兵士団の訓練場に行くと、既にイワンさんミランダさんを始め、見覚えのある面々が打ち込み稽古をしていた。


「坊主、一旦お前のジョブを戦士にする。じゃないと剣技が身につかないからな。堀師や鍛冶師のジョブに戻すには手数料として小銀貨1枚かかるが、これは俺のからのプレゼントだ。一回はタダで戻すことができるから安心しろ」


 俺はアーノルドさんから【転職手数料無料券】を1枚もらった。こりゃ本格的にクエストだなあ。


 それから訓練場にあるジョブクリスタルで剣をメインウェポンとして戦う戦士のジョブを得た俺は、アーノルドさんと訓練に勤しんだ。


 初日のメニューは主に筋トレで、木剣を使ったトレーニングはちょっとだけという感じだった。


「見よ! この美しい肉体美を! 坊主も目指さない……か?」

 と色黒の筋肉と白い歯を見せつけ親指サムズアップ。まるでテレビショッピングに出てくるムキムキ外国人トレーナーみたいだ。


「アーノルドさん、きついです……」


 アーノルドさんを背中に乗せての腕立てで腕がもげそうだ。S(筋力)にそれなりに振ってあるからもっているものの、元の世界のモヤシのままの俺であれば、一回もできずにギブアップしていただろう。


「きつい状態からのおかわり一杯が重要なのだよ、ほれ! 追い込みもういっかーい!」


「ぐう~~~~~」


 バタリ。


 ……というわけで、初日の朝稽古が終わった。今日は堀り仕事のつもりなんだけど、腕もつかな……?


「普通の仕事もちゃんとやるんだぞ~~」

 アーノルドさんは俺の考えていることはまるわかりのようだった。流石はトレーナーだ。


「……あれ、お前ずいぶん可愛いお弁当をもっているな?」


「あ、いや。見ないでくださいよ~~」


「隠さなくてもいいのに、このこの~~~。いいねえ、青春だねえ~~」


 今朝宿でオリビアさんにもらったお弁当をチラっとだけ見られてしまった。冷やかされて恥ずかしくなった俺は、急いでそれをインベントリにしまった。


「……では、ありがとうございました! また明日もよろしくお願いします!」


「おう、せいぜい頑張れよ~」



 ステータスは今どんな感じになってるかな。俺はステータスウィンドウを開いてチェックする。



Name:Hide(BaseLv15)

Job:warrior(JobLv1)

HP:78

MP:87

Status:S(筋力)22、V(持久力)11、A(素早さ)3+3、D(器用さ)5+3、I(知能)19、L(運)2+3(Rest0)

Resistance:水属性20%

Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv4、防具製作Lv4、メルトダウン、装備修理、ジュエリーブーストLv1、スラッシュLv1(Rest0)

鍛冶熟練度:FランクLv6、EランクLv5、DランクLv4、CランクLv4

pet monster:マメLv1/10(ポメラニアン・ウォーターウルフ)

所持金:661659arc



 マメがEランクに進化したおかげでペットバフの恩恵が増えたのと、戦士の基本技スラッシュLv1を取得できた。所持金はイケメン貴族が来た日のミスリル装備の売却金が大きく、マメの進化で大金貨3枚も使ったのにむしろ増えていた。



 さてと。本日の仕事は岩盤を掘るだけなので、ジョブはこのままでいいな。



 アーノルドさんにお礼を言った俺は、掘削作業をするため、町の西にある高台の岩盤地帯へと向かった。

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