「ただいま~~」
「お邪魔します……」
ついに俺はオリビアさん宅の敷居をまたいでしまった……。その瞬間、
「あ~~姉ちゃんが男連れてきたぞ~~~!!!」
「わーい、お兄ちゃん遊ぼ~~~~、あワンちゃんだ!」
なんかちっちゃい男の子が二人、俺の足元にうろちょろとまとわりついてきた。オリビアさんの弟さんかな。マメがワン! と嬉しそうに可愛く吠えた。
「こら! 二人ともハイド君に失礼でしょ! もうすぐご飯なんだから、手を洗ってきなさい!」
「「はーい! お兄ちゃん後でね~~~」」
オリビアさんに叱られ、家の奥の方へ入っていく可愛い男の子たち。それと入れ替わりに、ゆらりと目を幽鬼のように光らせ、「オリビアの男だと……」とブツブツ呟きながら鬼気迫る表情をした人影が一つ。
「き~~さ~~ま~~」
「ひいっ!!」
完全気配遮断! と発動しようとしたまさにその時だった。
「よくもうちのオリビアを~~~~~!!! ……ってあれ? なんでハイド君がここにいるんだ?」
「あれ? アーノルドさんじゃないですか。え、ということはまさか……」
俺とアーノルドさんは同時にオリビアさんを見る。
「え? 二人とも知り合い? なーんだ。言ってくれればいいのに」
あっけらかんとした調子で手をポンと叩き、オリビアさんはそう言ったのだった。
「あら可愛い、いらっしゃいハイド君! はじめまして、私は母のマリーです。まずは夕食までオリビアの部屋でくつろいでちょうだい。ほら、ジークにライプツィヒ! 手を洗ったら、お兄ちゃんとお姉ちゃんにお菓子を持って行ってちょうだい!」
「「はーい!」」
この人はオリビアママのマリーさんだな。オリビアさんがいい感じに歳を重ねればこうなるんだろうなって感じの人だ。
「……あ、みなさん初めまして、オリビアさんの親友やらせてもらってますハイドと申します。今日はよろしくお願いします!!」
みなさん勢ぞろいしたところで俺は、感じが悪くならないように深々とお辞儀をしたのだった。
「……」
一人ゆらりと目を幽鬼のように赤く光らせている人がいるんだけど、とりあえずは気にしないことにした。
俺はオリビアに手を引かれ、二階のオリビアさんの部屋へ。
「うわー! ここがオリビアさんの部屋……、女の子らしい部屋ですね!」
「そう? 私はもう小さい頃から住んでるから何とも思わないけどね~」
そんな会話をしていたら部屋の外が何やら騒がしい。
「あなた! 何盗み聞きしようとしてるんですか! はしたないまねはやめてください!」
「だってママ~~~、オリビアとハイド君が~」
「さっきお姉ちゃんとお兄ちゃん手つないでたよ! たぶん今中でチューしてるよ!」
「ぬわにーーーーー!! 悪・即・斬!!!」
「キャー! あなたっ! 剣をしまってください!」
という会話が閉まったドアの向こう側から聞こえてきた。というか全部丸聞こえだ。オリビアさんが羞恥のあまり顔を真っ赤にしてプルプル震えている。
俺は小声で。
「オリビアさん……、俺は全然気にしてませんから……。はい、深呼吸」
スーハー、スーハー。
「落ち着きましたか?」
「ええ、何とか。でも後で覚えておきなさいよ……」
オリビアさんは拳をブルブルと震わせ頭にツノを生やしていた。
それからしばらく「これは私の9歳の誕生日の時にリリアがね~」なんて言いながらオリビアさんの思い出の品を見せてもらっていたら。
「オリビア~~、夕食作るの手伝ってちょうだい~!」
「は~い!!」
「あ、じゃあ俺も準備一緒に手伝いますよ?」
「いや、ハイド君はお客さんでしょ? 夕食ができるまでここでくつろいでて下さい!」
「あ、はい……」
マリーさんに呼ばれたオリビアさん。俺も手伝おうかと腰を上げると、座っているようにと再び座らさせられた。
ぽつりと俺一人、マメの頭をナデナデしながらオリビアさんの部屋で絨毯の上に所在なく座っていると、弟君たち二人が「お兄ちゃん遊んで~!」とオリビアさんお手製の怪獣ぬいぐるみを手にもって突撃してきた。可愛い。
「……よし、お兄ちゃんと遊ぼうか!」
そういや甥っ子とよくこうして遊んだっけな。懐かしいな。
俺は夕食ができるまで、ジーク君、ライプツィヒ君と一緒にマメ参加型の怪獣バトルごっこをして遊んだのだった。ちなみにポメラニアンのマメはラスボス怪獣役な。
「みんな~、ご飯できたわよ~」
それからマリーさんの夕食の合図があり、俺も一家団欒に混ざることになった。