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第61話

 レベルアップのファンファーレが鳴り響いた。スカイドラゴンを倒してレベルが上がったようだ。



Name:Hide(BaseLv20)

Job:blacksmith(JobLv15)

HP:112

MP:103

Status:S(筋力)22+4、V(持久力)17+4、A(素早さ)8+3、D(器用さ)8+8、I(知能)20、L(運)2+6(Rest0)

Resistance:水属性20%

Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv4、防具製作Lv4、メルトダウン、装備修理、ジュエリーブーストLv5、スラッシュLv4、シールドガードLv2(Rest0)

鍛冶熟練度:FランクLv8、EランクLv7、DランクLv6、CランクLv7

pet monster:マメLv10/10(ポメラニアン・ウォーターウルフ)

所持金:2081241arc


 ジュエリーブーストLv5はスキルレベルマックスの攻撃力200%、攻撃力2倍。しかも消費するのは岩盤堀りで得られるCランク宝石と考えるとものすごく相性の良いスキルなんじゃないかと思う。


 今回のことで、やはりスピードも大事だと再認識したこと、マメのレア進化した場合のスキルの威力がD(器用さ)依存であることがわかっているので、V、A、Dとバランスよくステータスポイントを振った。


 あとは流石はドラゴンと言うべきか、マメのレベルがカンストした。



 ステータスウィンドウを閉じた俺は完全気配遮断を解除し、アーノルドさんたちの仕事を手伝うことにした。



 ……



 スカイドラゴンに殺された兵士は俺の知らない人だったけど、アーノルドさんに付き合って土葬に付き合った。殺された兵士には奥さんと子供がいたらしく、アーノルドさんが「マルコが死んだのは俺の責任だ! 奥さん、好きなだけ俺を責めてください!」と土下座して謝っていた。


 女の子の手を引いた奥さんは虚ろな表情でアーノルドさんをなじることはなかった。それが逆にアーノルドさんを苦しめているように俺には見えた。俺は自分の心がざわつくのを感じた。


 アーノルドさんがなぜ俺に防御スキルをまず極めろと言ったのか。理由がわかった気がした。


 俺が死んだらあの人はこんな虚無な表情になるのだろうか。だとしたら、俺は絶対に死んではいけないと思った。


 この生きる者に厳しい世界で、果たしてそれができるだろうか?



 ……



 モンスター襲来の事後処理が全て終わった後、グリモワール伯爵様から功労者に褒賞が出されることになった。死んだマルコさんは二階級特進だそうだ。


 俺も直接ドラゴンを討伐した者として褒章が出されることになった。褒章授与式など目立つので嫌だったけど、ルベン議長のメンツを潰してしまうことになるので受けざるを得なかった。


 いつだったか下らなすぎて忘れてしまったが、ギャグみたいなことでお馴染みの市議会場にて。どうやらここは、セレモニー的なことにも使われる場所のようだ。


 そこで俺は、グリモーワール伯爵から直々に【蒼竜勲章】を与えられた。これがメインの授与式で、あとの副賞などの授与はルベン議長より読み上げられるという形式がとられた。



 ……こういうことは慣れないなあと、気持ちが後ろ向きになってしまうのは仕方がない。だって他でもない俺だもの。



 俺はこんな勲章みたいなものを見せびらかしたくて、わざわざ危険を冒したわけじゃない。俺はアーノルドさんたちが命がけで戦っているのだから、彼らに世話になった身として恩返しのつもりで参戦したのだ。


 それにどう考えたって命がけで乳母車の母子を守り抜いたアーノルドさんの方が、ただ漁夫の利をかっさらっただけの俺なんかよりもこの勲章にふさわしいだろう。


 アーノルドさんは他でもない、あのオリビアさんのお父さんであり人格者だ。俺に優先的に勲章が与えられたとしても、心から祝福してくれるだろう。


 だが俺の心中は穏やかじゃない。


 竜を退治した勇者に勲章を与えるという派手な演出で大衆にアピールしようというお貴族様の魂胆が透けて見えて仕方ない。


 で祭り上げられた勇者様はどうなる? 嫉妬と羨望の的ってか? こちらからしたらいい迷惑だ。アーノルドさんはいいとしても、彼の部下たちは? 絶対に不満に思うはず。


 いつもなら忌避すべきような事態だが、完全気配遮断をしたい衝動をぐっと堪える。アーノルドさんたちが毎日コツコツと鍛錬に励み積み上げてきたものがようやく報われるべきこの晴れの舞台を、俺のわがまま一つで台無しにして良いはずがないからだ。


 この複雑な感情を誰かにわかってもらいたいんだけど、まあ理解されることはないんだよね……。


 煮え切らないものを抱えながら客席の方を見ると、オリビアさんとリリアさんが嬉しそうに手を振っていたので、俺はこれで良かったと思うことにした。


 可愛い女の子に自慢できることが一つ増えた。


 もうそれでいいや。深いことを考えるのはやめにしよう。



 そっとため息をついて後ろに下がりアーノルドさんに順番を譲った後は、彼の背中を無感情に虚ろな表情でぼうっと眺め、ただただ時が過ぎ去るのを待つしかなかった。

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