シッソケンヤークが告げた、破滅の神ハサーン。
それはムダヅカインにずっと宿っていた。
ムダヅカインの理性がサンザインを選び、
ハサーンの意識が、
ゼニーの力を使わせることを、選ばせていた。
ゼニーの力を使いすぎれば、
ハサーンがやってくる。
ムダヅカインはわかっていた。
ハサーンが解放されても、破滅。
ならば自分が選んだ勇者達に、
この世界の行く末を任せてみたかった。
シッソケンヤークと道は違えど、
ずっと世界の行く末を心配していた。
「私を倒せ!」
ムダヅカインは、最後の理性で叫ぶ。
ハサーンがムダヅカインを侵食する。
世界はゼニーの暗黒面よりも、
真っ暗な虚無に包まれる。
ゼニーの力も、何もない、
頼れるものが失われる感覚。
消費の果ての、ハサーン。
それは虚無を生み出すものでしかなかったのか。
サンザインたちの脳裏に、守るべき笑顔がうつる。
散財ばかりしていて、結局ハサーンを招いたとしても、
その笑顔はいつも力をくれた。
世界を破滅させてはならない。
強く、皆が思う。
小さな光が生まれる。
ハサーンが作り出す虚無の空間に、小さな、光。
欲しいものは、金でなくても手に入る。
本当に欲しいものは価値なんてつけようがない。
だから、手に入るし、
手放すこともないし、
ハサーンにだって負けない。
そう、信じる力が、まだ、ある。
小さな光が集う。
今まで助けてくれた人、
今まで見守ってくれてきた人、
そして、今まで敵対して来た人、
すべてが強大なるハサーンに立ち向かわんとする。
言葉は要らない。
いま、勇者達の心はひとつに。
それは、どんな力にも負けないものだ。
ゼニーを越えた力。
虚無の空間を、
光が満たしていく。
光は光を呼び、共鳴し、
奇跡をおこさんとする。
光の龍。
破滅の神ハサーンに、
勇者達の心が生んだ、
光の龍が挑みかかる。
(勇者…よ。勇者達よ…)
かき消されるその声を、彼等は知っている。
(ありがとう)
(未来は、任せた)
光の龍が虚無を飲み込む。
奇跡は起きた。
世界は光に包まれた。