希望の光が世界を駆けて、
ハサーンの恐怖を払拭していった。
それは奇跡。
心が起こした奇跡。
世界は救われたのかもしれない。
彼等は、シッソケンヤークの広間にいた。
誰ともなく、戦いが終わったことを感じていた。
もう、節約と散財で対立する必要もない。
どちらもなくてはならないもので、
バランスが一番大切なのだと。
バランスはあるべきところに戻ったのだと。
言葉にしなくてもわかった。
世界は回る。
すべてが夢だったかのように。
「それで、みんなはどうなったんですか?」
飯店の客の一人がマスターに尋ねる。
「日常に帰りましたよ」
サンダーマスターは微笑む。
「サンザインじゃなくなったの?」
「なくなっても、心は強いままです」
「こころ」
「勇者の心を、みんな持っています」
「会えますか?勇者に。サンザインや、戦った人に」
「望めば、きっと」
サンダーはお皿を拭く。
みんな、日常に帰っていった。
でも、奇跡の起こした絆は、今でも残っている。
飯店は今日もにぎやかだ。
話題は、今度開催されるダンパのことらしい。
「派手にやりたいよな」
「うん、そうですね」
「服も新調しなくちゃ」
「音楽どうします?」
「気ぐるみいいかしら?」
「もう、関わった人全員呼んじゃおうよ」
「ほよぉ?」
「予算は?」
「場所、あるんですか?」
口々に大騒ぎしているのに、
話が通じているのが、不思議でもある。
「場所、か」
リーダーらしい男が、笑ったのが見えた。
「そりゃもう、あそこしかないだろ」
「あそこ、か」
「それもそうね」
「うんうん」
通じているのが、やっぱり不思議だと、
通りすがりのお客は思う。
「ダンパはお好きですか?」
お客に、サンダーは問いかける。
「どういうものなんですか?」
「お祭り、ですね。パーッと華やかに」
「華やかに」
質素倹約の時代では考えられなかったことだ。
時代が変わった。
サンザインは今どこで何をしているんだろう。
お客は、会いたいなと思った。
「それじゃ、クーロンシムで派手にやろう!」
勇者達は、歓声を上げた。
その手には今でも輝くコインがある。
その心には今でも輝く力がある。
勇者達よ、永遠なれ。