私の人生は再び支えを見つけたかのようだった。
私は密かに藤原理恵と藤原優美を尾行し始めた。
あの二人がまだ何か企んでいる限り、過去の手がかりを掴むチャンスはきっとあるはずだ。
最近の優美は妙におとなしい。買い物や結婚式の準備に精を出している。
理恵も表向きは平穏そのものだ。
そんなある晩、優美と理恵が一緒に車で郊外の海辺へ向かうのを見かけた。私はタクシーで後を追った。
二人が辿り着いたのは、廃墟となった倉庫の前だった。
あまり近づくのは危険だと思い、遠くから様子を窺っていた。
すると、見覚えのある男と落ち合い、三人でそのまま倉庫の一室へ消えていった。
私はそっと近づいてみた。
中からは荒い息遣いや耳を疑うような声が交じり合い、思わず眉をひそめた。母娘でここまで堕落するとは…。
私はスマートフォンを取り出し、瀬川達也に現在地を送るべきか迷った。もし彼がこの現場を目撃すれば、私の話を信じてくれるだろうか。でも、そこまでする必要もない気がした。
そんな迷いの中、部屋の中から男の声が聞こえ、私は思わず手元を震わせてしまい、位置情報を送信してしまった。
「へぇ、相変わらず色気たっぷりだな。娘にも負けてねぇ。今日は当たりだ。次は新しい遊びをしようぜ。仲間も連れて前後から攻めてやるから、忘れられない夜にしてやるよ、どうだ?」
高橋啓介の声だった!彼は優美だけでなく、理恵とも関係を持っていたのか。なんて最低な連中だ。
続けて、女性の叫び声と激しい音が部屋から響いてくる。
私は耐えきれず、その場を離れようとした。しかし、ちょうどそのとき会話が聞こえてきた。
「本題に入ろう、約束は守ってもらうよ。」
「安心しろ、全部手はず通りだ。それに、魚はもう食いついたじゃねぇか。」
魚が食いついた?
嫌な予感が一気に広がった。今夜の尾行が、あまりにも簡単に進みすぎたことにようやく気づいた。
逃げ出そうと身を翻した瞬間、隔離された部屋のドアが「ガシャン」と大きな音を立てて開けられた。
高橋啓介がいやらしい笑みを浮かべて私を睨む。「おい、嬢ちゃん、さっきのショーは楽しめたか?前菜は終わりだ、次はメインディッシュだぞ。」
理恵と優美は何のためらいもなく服を整え、私の前に歩み寄る。
理恵は私を見下して鼻で笑い、「すぐに地獄でお母さんに会えるわよ。でも心配しないで、あなたの“素敵な”写真はネット中に出回るから。感謝しなさいよ、死ぬほどイイ思いをさせてあげるんだから、ハハハ!」
背中に冷たい汗が流れる。彼女たちが私にこの場面を見せた時点で、すでに罠は張り巡らされていたのだ。
案の定、高橋啓介が指を鳴らすと、暗がりから何十人もの男たちがぞろぞろと現れた。
優美は理恵の腕を取り、得意げに「さようなら、お姉ちゃん」と言い残して二人で立ち去った。
私はもう逃げ場がないと悟った。一人でこの人数を相手にできるはずがない。
私は必死にスマートフォンを握りしめた。
頭の中に瀬川達也の姿が浮かぶ。彼にあれほど冷たくされても、どこかで彼を信じていたい自分がいる。
今ほど彼に助けを求めたいと思ったことはなかった。
高橋啓介がにじり寄り、私の頬を力一杯平手打ちした。「このアマ!前のこと、まだ終わっちゃいねぇんだぞ。俺の大事なとこ、潰されかけた借り、返させてもらうぜ!」
口の中に血の味が広がる。
高橋啓介は私の髪を掴んで床に押し付けた。「本当は俺一人で楽しむつもりだったのに、余計なことしてくれたな。みんなでかわいがってやるよ!」
力任せに私のシャツを引き裂き、露わになった脚を舐めるように見つめながら、「いい体してるじゃねぇか!優美なんかよりずっといい。今日は思う存分楽しませてもらうぜ。そのあとは、こいつらにたっぷり“ご馳走”してもらえよ!」
「やめて!離して!」私は必死にもがいたが、男たちに手足を押さえつけられ、逃げ出すことはできなかった。
無理やり足を広げられ、絶望と恐怖が一気に襲いかかる。
このまま何もできずに全てが終わってしまうのか。謎も復讐も果たせないまま…。
達也…こんな絶体絶命の中で、私の心の中に浮かぶのは彼だけだった。
七年の愛憎、七年の誤解。私はまだ、終わりたくなかった。
「達也!達也!」私は叫び続けた。
耳元には高橋啓介の下卑た笑い声が響く。「瀬川のお坊ちゃんが助けに来ると思ってるのか?あいつはもうすぐ結婚だぜ。お前なんかのために来る訳ねぇだろ。仮に来ても──」
「来たらどうする?」
凍りつくような鋭い声が響いた。
涙でぼやけた視界の中、私は信じられない思いでその声を聞いた。彼が、本当に来てくれたのだ!
高橋啓介は私に襲いかかろうとしたが、その声に動きを止めた。瀬川達也だと気づくと、一瞬怯えたものの、すぐに虚勢を張って言い放った。
「来たって…来たってどうしようもねぇだろ?達也さん、今日はこんなに大勢いるんだ。あんたもここで一緒に終わりだ!」