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第二話:砂漠に湖を作る!?

「うおおおおおっ! 本当に水が湧いたぞ!」

「信じられん……領主さまは奇跡を起こしたのか!?」

 村人たちは地面から染み出す水を見て歓声を上げた。乾ききった砂に染み込むことなく、しっかりと水溜りができている。

 アルトは額の汗を拭いながら、ゆっくりと立ち上がった。

(ふぅ……思ったより疲れるな。でも、これができるなら——)

 彼のスキル《水操作》は、単なる水の浄化ではなく、水を自由に操ることができる。さらに、水源を探知し、地中深くの水を引き上げることも可能だと分かった。

「領主さま! この水……飲んでもよろしいのでしょうか?」

 老人が恐る恐る尋ねる。村人たちは喉がカラカラなはずだが、恐れ多くて手を出せない様子だった。

 アルトは自信たっぷりに頷く。

「当然だ。俺が出した水なんだから、絶対に綺麗だぞ」

 そう言うと、アルト自身がまず手ですくって一口飲んでみせた。

「……うん。うまい!」

 その言葉を聞いて、村人たちは一斉に水に手を伸ばし、思い思いに飲み始めた。

「……ああっ! こんなに冷たくて、澄んだ水……!」

「まるで泉の水みたいだ!」

「本当に、こんな奇跡が……!」

 涙を流しながら水を飲む者、顔を洗う者、子どもを抱きしめながら笑う母親——その光景を見て、アルトは心の中でガッツポーズを取った。

(よし……! まずは第一歩だ)

 だが、ただ水を湧かせただけではダメだ。安定した水源を作り、土地を潤し、作物を育てなければいけない。

(そうなると……もっと大規模にやる必要があるな)

 アルトは地面に手をかざし、再び《水操作》のスキルを発動させる。

「次は……湖を作るぞ!」

「な、なんじゃと!?」

 村人たちが目を丸くする。


 アルトはバルハ砂漠の地形をじっくり観察し、水が溜まりやすい窪地を探した。

(よし、あそこならいける)

 村から少し離れた場所に、自然のくぼみがあった。そこを利用すれば、水を溜めて湖を作ることができるかもしれない。

 アルトはその場に立ち、両手を広げた。

「《水操作》——解放!」

 彼の周囲の空気が震え、地下の水脈に繋がる感覚が広がる。そして——地面から水が勢いよく吹き出した!

「うおおおおおおおっ!?」

「す、すごい水の量じゃ!」

 まるで噴水のように水が湧き出し、くぼみに流れ込んでいく。透明な水はみるみるうちに溜まり、小さな池となった。

 アルトは満足そうに頷いた。

「うん、これを繰り返せば、ちゃんとした湖になるぞ!」

「り、領主さま……本当に湖を作るおつもりなのですか?」

「もちろんさ。水さえあれば、ここは砂漠じゃなくなる。草木を育て、食料を増やすこともできる。……それに、魚を飼うことだってな!」

「魚……?」

 村人たちはぽかんとした表情を浮かべる。

「そうだ。湖があれば魚を養殖できる。そうすれば食糧問題も解決できるし、交易の手段にもなる」

 このバルハ砂漠には海がない。当然、魚も手に入らない。だが——だからこそ、価値がある!

「俺はここを、魚が取れる砂漠のオアシスにする!」

 その宣言に、村人たちは息を呑んだ。

「……まさか、本当にそんなことが……?」

「いや、領主さまならやれるかもしれん!」

「うおおおおおっ!」

 村人たちの歓声が響く。

 アルトの挑戦は、まだ始まったばかりだ——。

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