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page.-11

母さんは、それに対してまた戸惑ってるみたい…だったんだけど、小林先生が先に…。



『あの、もしかして…田中…』


『小林先生も…あの、旧姓って村瀬じゃないですか…』



僕が何何!?って、先生の顔と母さんの顔をキョロキョロと、何が起こっているのか理解出来ず何度も見ていたら…!



『あはははは』

『アッハハハ』


『!?!?』



…二人同時に、手を叩いて突然大笑いしだした…!?



『何なのよもぅ。岩塚くんのお母さんが、まさか美穂だったなんて…アハハハ』


『あはは…はぁ。愛美も、無事に高校の先生になれたんだったら、なんで連絡くれなかったのよ。それにいつ結婚したの!』


『ごめんごめん。そういうの色々と連絡したかったんだけど、でも何故か出来なかったの。なんでか知らないけど連絡が出来なくなっててさ』


『えっ…あっ!それ、ごめん!私のせいだわ…。結婚したあとに携帯番号も携帯の会社も変えたの、愛美に言ってなかった…』


『あのさぁ…美穂…』



『!?!?!?』



…しばらく、こんな調子で会話が続いたあとの、『先生…これって、何がどう…』って僕の混乱した様子に、小林先生が説明して応えてくれた。



『実はね…先生もお母さんも香岡女子大って大学に通ってたときに《早瀬ヶ池発祥ファッション研究会》ってサークルに入った同じメンバーだったの。それで在学中も女子大を卒業してからも、先生たちは休みの日は当時流行ってたお洒落な洋服を着て…髪の毛なんかもう巻き巻きふわっふわにさせちゃって…瀬ヶ池でお昼から夜遅くまで、美穂や他のメンバーの子たちと一緒に遊んで…』



…瀬ヶ池!大晦日の夜に母さんが教えてくれた、あの大都市の街のことだ!



『信ちゃんに見せたでしょ。あの5人並んで撮った写真。あれの真ん中に写ってたのが愛美…小林先生よ』


『えぇっ!?』



その夜、僕が母さんに頼んでもう一度、あの5人の写真を確認させてもらったことは、言うまでもない…?



『…私たちの青春の日々…あーぁ。あの頃は毎週毎週、土曜日と日曜日が待ち遠しくて、ほんとに楽しかったなぁ…』







『…じゃまた。そういうことで、今度一緒に食事とかしようね。美穂』


『そうね。あと息子の信吾の成績アップは、愛美に任せたから!』


『大丈夫よ。私に任せといて!』



小林先生が元気にそう言って、教室のドアをガラッと勢いよく開けると…!


次に待っていた、大野君という同じクラスの男子生徒とそのお母さん…廊下で不機嫌そうな顔をして待っていた…。



『あ…ぉ、大野くんとお母さん…お、遅くなって大変申し訳ございません!な、中へ…どうぞ…』



僕と母さんは『先生、ありがとうございました』とお辞儀をし、母さんは先生に《またね!》と元気に手を振って…その日は母子揃って家へと帰った…。







あの日から僕は学校での放課後、職員室にいる小林先生を訪ねて《早瀬ヶ池という繁華街》や《その周辺の地域》について、色々と先生に質問することが増えていった。



『そうね…早瀬ヶ池って街は、一言で言うと《女の子たちの街》なの』


『女の子たちの街…?』


『そう。もっと言うと《綺麗な子や可愛い子たちが集まる街》だし、逆に言うと《綺麗な子や可愛い子たちしかいない街》』


『えっ…なんで!?』



小林先生は、いつもそんな言い方をして、それで僕が驚くとその無邪気な驚き顔を見て、ニコニコ笑って楽しんでる…ように見えた。



『早瀬ヶ池という街は、女の子たち全員を綺麗に…または可愛く…凄くお洒落に変身させてくれる街だから』


『全員…って、凄っ!』







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