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夏休みが終わり、あっという間に8月は過ぎていった…。



『9月になったね。岩塚くん』


『…はい』


『美波経済産業大学の受験申し込みは、どうする?』


『……。』



…僕は小林先生に何も答えなかった。



『宮端学院大学受験の、不合格だったときの滑り止めにもなるけど…』


『…先生。僕は宮学不合格の滑り止めとか、考えてません』


『……!』



そのあと僕は小林先生とほんの僅かな時間、真剣な眼差しで視線を交えた…。



『…本当にいいの?』


『はい!』



僕は小林先生に、強く頷いて見せた。



『うん。わかったわ。じゃ岩塚くんのその宮端学院大学合格への想い…先生ちゃんと受け止めたからね!』







そして、美波経済産業大学の受験申込み期間は、僕を待たず通り過ぎて終わった…。

けれど僕は宣言のとおり、それに全く後悔することはなかった。


そして暦は10月下旬となり…僕の高校では、2学期の中間テストがあっという間に終わって定例の如く、学年の《中間テストの成績トップ30位》が廊下に張り出され、発表された…。


学年の各クラスから、それを見ようと教室を出て行く、バタバタと騒がしい同級生たちの足音…。

そして突然沸いたように、同級生たちの驚きと歓喜の混ざるような叫び声が、廊下に響き渡った。




…夏休みの最後の日、僕が下宿を終えて家へと帰る直前…小林先生は僕にこうアドバイスをしていた。



『宮端学院大学に無事に合格はいれるためには、2学期の中間テストの成績で、学年で10位以内に入ることと、それとクラスで1位か2位になること。もし、それくらいの学力を培うことが出来ていなかったら…合格はもう難しいかもしれない、って覚悟して…!』


『!』



…僕は教室でひとり、目を瞑って神に祈るように集中力を高めていたが…ふと覚悟を決めてスッと立ち上がり、見えない何かに背中を押されるように…ゆっくりと教室から廊下へと出た…。


…中間テストの上位30位の発表を見に向かう僕…。廊下にいた同級生の全員が振り向き、僕を見ている…それを僕は感覚的に感じ取った…。



…僕は、遂に上位30位の記された成績一覧表の前へ…。その一覧表のどこに自分の名前があるのか…自身の目でそれを見つけ、確認する前に…。



『岩塚くん…7位だよ。凄いね』


『……えっ?』



その声に振り向くと…そこには西森七香さんがいた。



『私は11位だったんだ…頑張ったんだけど』


『えっ…7位?僕?』



……な、7位!!


しかも…あの西森さんよりも上位だったなんて…凄い!

僕は僕の心の中だけで、躍んで跳ねて大喜びをしていた。


というか…実はこれが、西森さんと初めてちゃんと話をした瞬間だったんだけど…あまりにも喜び過ぎて、それに気づけなかった…。



そして、教室でもクラスの上位5位が発表された…僕はクラスで2位だった!

僕はまた、心の中だけで2度目の《躍び跳ね大喜び》をしていた。


ちなみに…隣のクラスの西森さんも、そのクラスでは2位だったらしい。



この結果発表は、小林先生ももちろん知っていた。


僕は先生から『おめでとう!』との一言を貰ったものの『だけど宮学入試の合格証を貰うまでは、最後まで気を緩めないで勉強を頑張って続けてね』との厳しい一言もセットで貰った…。




家に帰ると僕はもちろん、母さんにもその結果を報告した。お父さんもそれを聞いて喜んでた。


あとは、宮端学院大学の入試日まで、ラストスパートで勉強に励むだけだ…!


その夜からもずっと、入試の日まで僕の猛勉強はちゃんと続いた…。








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