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page.8

『あの…どこへ行くんですか…?』


『地下鉄でも良かったんだけどねぇ。私、地下鉄の人混み嫌いなのよぉ。あ、ほら。もう着くわよ』



僕はオカマのおっさんとタクシーに乗っていた。たぶん10分くらい。

タクシーは何処かの大通り沿いの、お洒落な雰囲気の建物の前に停まった。



『……ここ、美容院?』


『そう。私が利用してる美容院よ。ほら、さっさと降りて!』



…そしてタクシーは走り去った。

2階建ての、全てが真白い美容院。向かって右側に、1階から2階へと、緩いカーブを描きながら広々とした階段が延び、その先に美容院の玄関扉がある。

玄関から左は全てガラス壁で、そこから店内の照明の明かりが、眩しいほど路上に注いでいる。


1階は駐車場。車が6台の2列…12台も駐車できるスペース。今は5台が駐車されている。



『何してんの?ほら、さっさと階段を上がりなさいよ』


『あ…はい』



階段を上がっていくと、徐々にガラス壁の向こう…2人?3人?…のお姉さん美容師たちが、お客様である女性らの髪をカットしたり、セットしているのが見える。


玄関にお店の名前…【cloche dorée】これフランス語かな?読むこともできず、言葉の意味も解らなかった。

僕の背後から、僕に追い付いたおっさんが、美容院の扉をゆっくりと開ける。



『アンナちゃん、こんばんは』


『あ、菊江さん。こんばんは』



おっさんは、レジカウンターに立って女性客から料金を受け取って、それをレジに仕舞っていた髪の長い、綺麗なお姉さんに話しかけていた。



「アンナさん、ありがとう」


『あ!ありがとうございました。また宜しくね』


「はーい」



僕をジロリと見て…おっさんの横を擦り抜けて、その女性客は開いた玄関扉から出ていった。そして玄関扉はパタンと閉まった。


なんか、この店内…凄く甘くていい香りがする…。

僕は思わず、気付かれないように静かに…深呼吸した。



『…この前ね、私の同僚仲間の1人が、お店を改装して《男の娘のお店》始めたって言ってたじゃない?』


『あぁ…うん。ちょ、ちょっと菊江さん…待って』



カウンターから出てきたお姉さん美容師…てか、なんかこのお店の一番偉い人っぽい。僕の黒ぶち眼鏡と違って、凄くお洒落な眼鏡を掛けている。


ってか…脚長っ!それに細くて…めっちゃくちゃ綺麗!


オカマのおっさんと、そのアンナさんっていう綺麗なお姉さん美容師とが会話してるあいだ、僕は時間を持て余していたので、ちょっと美容院の店内を見回してみた。


…白を基調とした、凄く清潔感あるモダンな雰囲気の店内だ…。








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