護衛のおじさん――いや、いまや立派な“守衛さん”のおかげで、お店はますます安心して開けるようになった。
彼が門のそばに立っているだけで、庭は穏やかな空気に満ち、兄たちも生き生きと接客をしている。
「いらっしゃいませー!」
「今日はどんなものを交換しますか?」
最近では、葉っぱや小枝をお金に見立てる遊びではなく、本当のコインを出してくれるお客さんも増えてきた。
旅人や商人、遠方の貴族の使いの人までがやってきて、庭先の小屋は大賑わいだ。
ある日、私はそのコインを見つめながら考えた
(もらうばかりじゃなくて……もっと面白いものを作って還元したいな。)
◇◇◇
お昼すぎ、庭の作業台に石ころと古いお玉を並べてみた。
お玉は柄が少し曲がっているが、金属部分はまだ光沢を残している。
私はそれを両手で包み、心の中で強くイメージした。
「この石と、このお玉……合わせたら、どんなものになるかな?」
光が生まれ、空気が震える。
次の瞬間、私の手の中に現れたのは、つややかな石を中央にあしらった銀のネックレスだった。
お玉の金属が鎖や台座に生まれ変わり、石は見事な宝石のように輝いている。
「わああ……!」
「すげぇ!」
兄たちが歓声を上げ、護衛のおじさんも「こりゃ商売になるな……」と目を丸くした。
「じゃあ次は……この折れた釘と、この古いスプーン!」
カラン、と音を立てて置かれた二つの金属。
私はまた想像を膨らませる。細く、軽く、けれど強度のあるものを……。
光が弾け、そこに現れたのは、美しい銀の髪飾りだった。
細い釘が軸となり、スプーンの曲面が花びらのように広がっている。
「すごい、なんでもできちゃうのね!」
母が目を細め、兄たちは「俺の分も!」と次々に材料を持ってくる。
◇◇◇
その日の夕方、私はまた新しい挑戦をしていた。
割れてしまった陶器のお皿と、金色の染料を手に取る。
「これを合わせたら……どうなるかな?」
等価交換を発動させると、皿の欠片はふわりと集まり、光に包まれた。
次の瞬間、そこに現れたのは、細やかな金の文様が縁を飾る美しい陶器の皿だった。
「わぁ……きれい……!」
思わず自分でも見とれてしまうほどの仕上がりに、母は嬉しそうに頷き、護衛のおじさんは「こいつは高く売れるぜ……いやいや、守り甲斐のある店だな!」と笑った。
兄たちは「次は何と何を合わせる!?」と目を輝かせている。
お客さんたちも興味津々で、次々に材料を持ってくる準備を始めていた。
石とお玉でネックレス。
釘とスプーンで髪飾り。
陶器と染料で黄金の皿。
等価交換の力は、組み合わせ次第で無限の可能性を秘めている――そんな実感が、胸いっぱいに広がる。
ネセレ、3歳。お店のカウンターの向こうで、世界を変えるものづくりの夢を膨らませた冬の出来事である。