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第8話:等価交換の新境地!

護衛のおじさん――いや、いまや立派な“守衛さん”のおかげで、お店はますます安心して開けるようになった。


彼が門のそばに立っているだけで、庭は穏やかな空気に満ち、兄たちも生き生きと接客をしている。


「いらっしゃいませー!」


「今日はどんなものを交換しますか?」


最近では、葉っぱや小枝をお金に見立てる遊びではなく、本当のコインを出してくれるお客さんも増えてきた。


旅人や商人、遠方の貴族の使いの人までがやってきて、庭先の小屋は大賑わいだ。


ある日、私はそのコインを見つめながら考えた


(もらうばかりじゃなくて……もっと面白いものを作って還元したいな。)


◇◇◇


お昼すぎ、庭の作業台に石ころと古いお玉を並べてみた。


お玉は柄が少し曲がっているが、金属部分はまだ光沢を残している。


私はそれを両手で包み、心の中で強くイメージした。


「この石と、このお玉……合わせたら、どんなものになるかな?」


光が生まれ、空気が震える。


次の瞬間、私の手の中に現れたのは、つややかな石を中央にあしらった銀のネックレスだった。


お玉の金属が鎖や台座に生まれ変わり、石は見事な宝石のように輝いている。


「わああ……!」


「すげぇ!」


兄たちが歓声を上げ、護衛のおじさんも「こりゃ商売になるな……」と目を丸くした。


「じゃあ次は……この折れた釘と、この古いスプーン!」


カラン、と音を立てて置かれた二つの金属。


私はまた想像を膨らませる。細く、軽く、けれど強度のあるものを……。


光が弾け、そこに現れたのは、美しい銀の髪飾りだった。


細い釘が軸となり、スプーンの曲面が花びらのように広がっている。


「すごい、なんでもできちゃうのね!」


母が目を細め、兄たちは「俺の分も!」と次々に材料を持ってくる。


◇◇◇


その日の夕方、私はまた新しい挑戦をしていた。


割れてしまった陶器のお皿と、金色の染料を手に取る。


「これを合わせたら……どうなるかな?」


等価交換を発動させると、皿の欠片はふわりと集まり、光に包まれた。


次の瞬間、そこに現れたのは、細やかな金の文様が縁を飾る美しい陶器の皿だった。


「わぁ……きれい……!」


思わず自分でも見とれてしまうほどの仕上がりに、母は嬉しそうに頷き、護衛のおじさんは「こいつは高く売れるぜ……いやいや、守り甲斐のある店だな!」と笑った。


兄たちは「次は何と何を合わせる!?」と目を輝かせている。


お客さんたちも興味津々で、次々に材料を持ってくる準備を始めていた。


石とお玉でネックレス。


釘とスプーンで髪飾り。


陶器と染料で黄金の皿。


等価交換の力は、組み合わせ次第で無限の可能性を秘めている――そんな実感が、胸いっぱいに広がる。


ネセレ、3歳。お店のカウンターの向こうで、世界を変えるものづくりの夢を膨らませた冬の出来事である。

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