春の柔らかい日差しが庭を包む朝、私は兄たちに連れられて家の広間へ向かった。
そこには母と父、そして護衛のおじさんが待っていて、テーブルの上には可愛らしい包みがいくつも置かれていた。
「ネセレ、お誕生日おめでとう!」
「4さいになったな!」
兄たちが満面の笑顔で拍手をしてくれる。
胸がわくわくして、思わず小さな手を合わせた。
「ありがとう!」
母がそっと包みを手渡してくれる。
リボンをほどくと、中から出てきたのは――小さなエプロンとワンピース。
深い紺色の生地に、白いレースの飾りがついていて、胸元には小さなポケットもある。
「これ……おみせやさんの制服?」
「そうよ。あなたとお兄ちゃんたち、おそろいよ。」
兄たちも同じ色のベストとシャツを着てくるりと回ってみせる。
「どう?似合う?」
「すごく似合う!」
私はエプロンを胸に当て、くるりと回った。
父が目を細めて「うちの店員は世界一だな」と言ってくれる。
護衛のおじさんも「こりゃ本格的だな」と笑っていた。
◇◇◇
最近のお店は、ただの交換だけじゃなく、リサイクルが大ブームになっている。
古着や布を持ち込む人が増え、私は毎日のように新しい挑戦をしていた。
「このテーブルクロス、ドレスになるかな?」
厚手の布を両手で包み、心の中で想像する。
光が走り、次の瞬間には裾にフリルがたっぷりついた可愛らしいドレスに変わっていた。
「まぁ……!これがあのクロスだったなんて!」とお客さんが歓声を上げる。
「じゃあ、こっちのハンカチは?」
「靴下にするの!」
小さなハンカチがするすると形を変え、伸縮性のある靴下に変わる。兄たちが「これなら滑りにくい!」とその場で履いて駆け回った。
「……じゃあ、このコルセットは……?」
差し出された古いコルセットを手に取り、私は前世の記憶を頼りに考えた。
動きやすく、体を締めつけすぎず、でもしっかりと支える下着……。
「等価交換……最新のブラジャーに!」
光の中から現れたのは、繊細なレースと柔らかな布地で作られた、美しいブラジャーだった。
母は一瞬「まぁ……!」と目を丸くし、隣にいたお客さんの若いお母さんが思わず手を伸ばす。
「これ……すごく着けやすそう……!」
「さすがネセレ様!」「新しい時代の下着だわ!」と女性たちが口々に感嘆の声を上げる。
兄たちはきょとんとした顔をしているが、護衛のおじさんは「さすがにこりゃ参ったな……」と頭をかいていた。
こうして次々に生まれる現代的な下着や肌着は、瞬く間に噂となり、王都にまで広がりはじめていた。
旅人が「王都で流行っているらしいぞ!」と嬉しそうに言うと、私は小さく笑った。
「じゃあ、もっともっと作らないとね!」
制服を着た小さな店員たちが並ぶカウンターの奥で、私はまた新しい夢を描いていた。
等価交換の力があれば、きっともっとたくさんの人を笑顔にできる――そう信じて。
ネセレ、4歳。おそろいの制服に身を包み、リサイクルの魔法で王都までをも動かす春の出来事である。