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第10話:夏の魔法、ひんやりアイス誕生!

夏がやってきた。


庭の木陰でさえ、昼間は汗ばむほどの陽気で、私は小さな手で扇子をぱたぱたさせながら考えた。


(こんなに暑いんじゃ、みんな元気がなくなっちゃう……何か冷たいものがあればいいのに。)


そう思った瞬間、前世の記憶がひらめく。


――アイスクリーム。


◇◇◇


「ネセレ、今日は何をつくるの?」 兄たちが興味津々でのぞき込む。


私は台所から牛乳とジュースを持ってきて、作業台に並べた。


「これを冷たくして、美味しくするの!」


両手をかざし、心の中で強く願う。


「等価交換……ひんやりアイスに!」


牛乳が淡く光り、瞬く間にふわりとした白いアイスクリームに変わる。


ジュースは鮮やかなオレンジ色のシャーベットに変わり、冷たい空気が周囲に広がった。


「わぁぁぁ!つめたい!」「なんだこれ!?」 兄たちはスプーンを手に取り、恐る恐るひと口。


次の瞬間、顔がぱっと輝いた。


「おいしい!!」「こんな食べ物、食べたことない!」


母が嬉しそうに微笑む。


「まぁ、これなら夏でも元気が出そうね。」


◇◇◇


お店に出してみると、瞬く間に大人気になった。


ジュースを持ってくる人、牛乳を差し出す人、水筒を抱えて走ってくる子供までいる。


私はどんどん等価交換をして、冷たいアイスやシャーベットを次々と作った。


「こっちはいちご味!」


「ぶどうのシャーベットもありますよ!」


兄たちは忙しそうにスプーンを配り、護衛のおじさんは列を整える。


庭はまるでお祭りの屋台のようににぎやかで、笑い声が風に乗って広がっていった。


◇◇◇


しばらくして、旅人が興奮した様子でやってきた。


「ネセレ様!王都でもアイスが噂になってますよ!」


「えっ、ほんと?」


「ええ!王さまもご飯のあとに食べて、『こんな美味しいものがあったとは!』と大喜びだったそうです!」


私の小さな胸が高鳴った。王さまがアイスを……!


思わずにっこり笑い、スプーンをくるりと回した。


「じゃあ、もっと美味しいのを作らなくちゃね!」


牛乳と果物を混ぜてみたり、水と蜂蜜でシャーベットを作ったり。


次々と新しい味を試しながら、私は夢中で魔法を振るった。


庭の風がほんのりと甘く、ひんやりとした香りを運んでくる。


ネセレ、4歳。小さな手から生まれたアイスの魔法が、王都までをも虜にした真夏の出来事である。

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