庭の片隅に置かれた自転車を見ながら、私は考え込んでいた。
荷物が積めない問題……これを解決しなければ、遠くへ商品を運ぶことなんてできない。
「ネセレ、昨日の自転車、すごかったな!」 兄たちが嬉しそうにペダルを回して遊んでいる。
でも、その後ろにはやっぱり荷物が乗らない。
「やっぱり荷物も運べるようにしたいよね。」
護衛のおじさんが顎をさすりながら言った。
「なら、荷台をつけりゃいいんじゃねえか?昔、荷物を引く車があったろ。」
その言葉に、前世の記憶がぱっとよみがえる。
――リヤカー。
「そうだ!自転車に、リヤカーをつけよう!」
◇◇◇
私は家の倉庫を探し、古い木枠と小さな車輪を見つけた。壊れた手押し車や折れたベッドの枠まで引っ張り出してくる。
「これとこれを組み合わせて……。」
両手をかざし、強くイメージする。
頑丈で、たくさん荷物が乗せられて、しかも自転車と連結できるもの――
「等価交換……リヤカーに!」
光が走り、木枠と車輪が一体となって変化する。
瞬く間に現れたのは、ぴかぴかのリヤカーだった。
荷台は広く、後ろにはしっかりした柵もついている。
「すごい!これならいっぱい運べる!」 兄たちが目を輝かせ、護衛のおじさんが試しに荷物を積み込みながら頷く。
「おお、こりゃ丈夫だ……これなら村まで何往復でもできるぞ。」
「じゃあ、自転車とつなげて……」 私はリヤカーと自転車の間をつなぐイメージを描き、もう一度等価交換を発動する。
金属のフレームがするすると伸びて、ぴったりとした連結部分が現れた。
「できた!」
さっそく兄が自転車に乗り、護衛のおじさんがリヤカーに乗せた箱を押さえる。
「いくぞー!」 ペダルが回り、自転車がゆっくりと動き出す。荷台のリヤカーも滑らかに後ろをついてくる。
「わあ!ちゃんと走ってる!」
「これなら荷物もいっぱい運べるよ!」
庭に歓声が響く。
母も「これで遠くのお客さんにも届けられるわね」と嬉しそうに笑った。
私は自転車とリヤカーを見つめ、胸を高鳴らせた。
「よし、これでおみせやさんはもっと広がるよ!」
王都でも噂になるかもしれない。
小さな店の可能性がまたひとつ広がった気がした。
ネセレ、4歳。自転車にリヤカーをつけて、夢を運ぶ準備を整えた秋の出来事である。